381「天気予報の恋人」



天気Wikipedia



アイドルとファンとの関係とはつまり、毎日の天気のようなものなのではないかと思うのである。


天気というのは、物理的な何かではなく、あくまでも天の差配のしわざである。
だから、「今日は晴れて欲しい」と思ってもそうはならなかったり、
「そろそろ一雨欲しい」と考えると、日照りが何日も続いたりといった具合に、
こちらの都合通りには、なかなか事は運んでくれない。
理想は、こちらの思うように天気を調節できる事だろうが、そんな事、当り前の話だが誰にも出来っこない。
将来、そんな発明を中松さんあたりがやってのけてしまうかも知れないが、
現状、気まぐれなお天気を、ボクたちの意思でコントロールする事は不可能だ。
天気を調節する事ができない以上、地上にいる我々としては、
「お天気なんてそんなもの」という事を理解し、大前提にした上で、
暑ければ薄着をし、雨ならば傘の準備をし、災害に備えて家の補強をする。
言わば、毎日の天気に対する、自分なりの「対症療法」に終始するしかない。
幸い、天気予報である程度の予測はできる世の中。それを基にして、
自分なりの天気との付き合い方を構築できれば、例えどんな天気であっても、
割合、快適に過ごす事ができるかも知れない。
しかし人間、時には傘を忘れ、雨の中をずぶ濡れになる事もあるだろうし、
日焼けのし過ぎで水ぶくれができてしまう事もあるだろう。
だが、雨や日光を責める事はできない。なにせ天気とはそういう気まぐれなシロモノ。
悪いのは、天気のそういう性質を理解できず、傘を忘れたり日焼け止めを怠ってしまった自分なのである。


素材としてのアイドルが発掘され、育成を経て、ボクたちの前に姿を現し活動するという一連のプロセスは、
そういう事が行われていると知ってはいても、本来なかなか目にできるものではなかった。
まさにそれは、見えざる手の差配の如く、ある日突然この世にもたらされるようなものであり、
逆に言うと、そういう見えない部分だからこそ、誰も気にしてこなかったのである。
そして前にも書いたが、ボクたちは常に「与えられる」者。あくまでも受動的な存在でしかなく、
ボクらがどう講釈を捻り出したところで、与えられた物の生い立ちや性質まで変える事などできないはずなのだ。
天気を変えようなんて無理だし、まして天気の神様に直接干渉なんてできる訳もない。
ボクたちにできる事は、起こる天気と上手に付き合い、少しでも快適に過ごすという事。
それしかないのだと、ボクは思うのである。
モーニング娘。Hello!Projectは、そういう「見えざる手」の部分までをもショーアップし、
大々的に公開する手法がファンにウケて、人気を博してきた側面があるが、
それが、ファンと演者、お互いの距離感を大きく麻痺させ、
ボクは、今のような事態に陥っているような気がしてならないのである。


アイドルとファンとの距離には、絶対的な「黄金比」がある。
そして、その距離のバランスに狂いが生じたとき、両者の関係性は崩壊するのである。
ただ、楽観と言われそうだが、ボク個人としては、ハロプロとファンの関係性は、
ギリギリのところだけど、まだなんとかバランスを保持していると思っている。
もちろん、危うい現状には違いないが、「彼女たちはこんなものでは終わらない」とボクは信じているし、
彼女たちが頑張る姿を見せ続ける限り、ファンはきっとその後をついて行く。
ボクは、アイドルとファンの関係なんて、それだけで十分だと思っている。
与えられた「アイドル」というエンタメを最大限楽しもうとする、
毎日の天気に不平を言う事なく、その気候に適応しようとする姿勢をブレさせない、
賢明なファンがまだまだ多くいる以上、ハロプロは大丈夫だとボクは思っているのだが。

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