380「説得力」



元モー娘。紺野あさ美が電撃復帰!(デイリースポーツ)



11か月前、「卒業後は学業に専念します」と言って、
モーニング娘。を卒業した紺野あさ美が、ガッタスのCDデビューに合わせて復帰する事になった。


今明らかとなっているこれが事実の全てであり、その背景にあるものや、それぞれの持つ思惑などという話は、
彼女自身と、その近しい人間しか知りえない、言わばブラックボックスである。
そういった部分に、こちら側であれこれ思いを巡らせる事は可能だが、
今回はあえて、事実以上の想像はしないでおこうと思うのだ。
そういう、勝手な想像からの思い込みが、時に不毛な「論争」の火種になるという事を、
特に最近は、身にしみて実感するようになったし、
誤った思考で話が進んで行き、事実が捻じ曲げられてしまうというのも本意ではないので、
あくまでも、目の前に与えられた事実だけで、ボクとしての意見を述べようと思う。


でまあ、いろいろ考えてはみたのだが、やっぱりどうやってもこれは、
相当に格好悪くて、ブサイクな話だと言わざるを得ない。
おめでたい(事なのだろう、一応は)話題であるとは思うが、
決して見栄えの良い、聞こえの良い話などではないというのが、とりあえずのボクが抱いた印象である。


今さら、卒業式の時に流した涙を返せなどと言うつもりもないが、
「ステージに上がるのは最後なので頭に焼き付けておきました」
なんていうコメントを残し、あれほど大々的に卒業式まで開いて、
ファンに別れを告げてから、わずか1年経たないうちに、
「大学生活と両立できるか悩みましたが、熟慮の末、決意が固まりました」
で、ハイ復帰。というのだから、じゃあ一体あの儀式は何だったの? と嘆きたくなってしまうのも仕方がない。
乞われてなのか、あるいは自主的なのかは知らないが、
夢があると大見得を切って旅立っていった割に、その夢が実際叶うのかどうかもよく解らないような、
こんな早いうちから、芸能界との二足のワラジを決め込み、しかも、
「大学で学び、成果を残してしっかり卒業する、というのが自分の成し遂げたいことであるのは変わらない」
と、当初の卒業の大きな理由であったはずの「夢の実現」という話さえ、なにやらウヤムヤになってしまっている感がある。
(大学に進む事そのものが夢だったというのは、少なくともボクは知らなかった)
もちろん、実際にはそんな事はないのかも知れないが、
こういう一連の流れの中に、確固たる説得力を見出せるかと言えば、ボクは決してそうは思わないし、
昨夏、華々しい有終の美を飾った、あの紺野あさ美の復帰劇だというのに、
なんとも薄っぺらで、釈然としない思いばかりが募ってしまう。
ボクとて、復帰する事そのものについては別に反対ではないけれど、
そのタイミングと経緯を考えた時、もうちょっと他にやりようはなかったのかと、実に残念でならない。


確かに、卒業に際してのコメントを再度熟読すれば、
「卒業後は学業に専念しますが、このお仕事が大好きなので、
         今後についてはいろいろな方向性をポジティブに考えたいと思っています」

などと書かれてあり、復帰への伏線がしっかりと残してあったという事は伺えるのだが、
「しばらく会えなくなる」という、ファン共通の思いがもたらした、
昨年の春から夏にかけての、紺野あさ美卒業に対する、あの独特の機運というものを思えば、
少なくとも大学生活を終えるまでは、表舞台に出てくる事もないと普通は考えるだろうし、
だからこそ、正月のハロコンで紺野が出てきた時には、
「彼女も普通の学生として過ごしているんだし、事務所も一線画して考えるべきなのでは?」
などと、その演出の在り方に苦言も呈したのである。
別に二足のわらじも悪くはないが、まだ1年生も終了していない段階。
学業優先の文字を見て、「そんなんで芸能活動、厳しいんじゃないの?」とも思うし、
両立可能の高らかな宣言を聞けば、「大学の勉強って片手間でもできるものなの?」などと、
ついつい意地悪っぽく言いたくもなってしまう。


こうして、明るみになっている事実とコメントだけを取り上げて、改めてこの一件を見渡せば、
冒頭ボク言った「格好悪くてブサイクな話」という意味も少しは理解してもらえる事だろう。
とにかく、何もかもが付け焼刃的というか、これまで数々の適当ぶりを発揮してきた、
アップフロントの歴史の中でも、特にやっつけ感が強いと言える、今回の紺野あさ美の復帰劇。
そしてボクがなにより解せないのは、その裏の経緯はどうあれ、最終的に首を縦に振ったのが紺野あさ美自身である以上、
彼女が、「格好悪くてブサイクな話」の完全当事者となり、その矢面に立たされてしまうという事だ。


何度も言うが、戻ってくる事が悪いのではなく、その在り方が問題なのだ。
事務所は、少なくとも彼女が損をしてしまうような取り扱いをすべきではなかったと思うし、
ファン感情や時流を見極め、時期やその方法論などももっと熟考した上で、
みんなから歓迎や祝福をされるような、復帰の場を与えてやるべきだったろう。
特に、アップフロントの「企業姿勢」が大いに疑問視されている昨今。
こういうボタンの掛け違いから、しっかりと修正していかないと、
熱狂的に支え続けたファンまでをも失ってしまいかねないのではないだろうか。


もちろん、「お帰りなさい」を拒否はしない。
だが、決してスカっと気持ちの良いものでもない。
まさにこの時期の空模様の如き、ジメジメとした復帰劇ではある。

96402