379「『告白の噴水広場』〜Berryz工房 14thシングル」



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これは、ボク自身、ヘタの横好きで恋愛小説を書いたりしていた経験から言える事なのだが、
ボクのような、特に三十代から上の男性たちが、
例えば「青春」や「学生時代」といったキーワードを与えられると、
ちょっと恐ろしいくらいに、細やかなディティールの世界観を空想する事ができてしまう。
しかもその空想(妄想でもいいが)は、制限がかからない限り、延々どこまでも続いて行くのだ。


放課後の教室。部活帰りの買い食い。文化祭の準備で遅くまで残る。
誰もいない自転車置場。図書室の窓から見るグラウンド。
学校へ続く坂道。帰り道のバス停。定期入れに入れた写真。


これらは、ボクがそういう空想の時によく用いるシチュエーションだったりするのだが、
こういう世界観が、ボクと同年代のつんく先生のハロプロ楽曲にも、やはりしばしば登場する。


つんくが手がけるハロプロ楽曲の魅力とは、一にも二にも、
その歌詞世界のベタさにあると、ボクは前々から言い続けている。
楽曲はアレンジャー任せで、コンポーザーとしてのつんくは死に体同然だ…
という口さのない話もよく耳にするが、「アイドルポップスとしてのつんく歌謡」という観点で考えれば、
流行り廃りに左右されがちな曲の良し悪しよりも、
唄い手が表現力を込めやすく、そして聴く者が感情移入しやすい、
ベタな青春歌謡の王道を行くような歌詞世界を紡ぎ出せる事の方が、評価に値するとボクは思うし、
特に、Berryz工房℃-uteに提供している楽曲の歌詞には、個人的に本当、脱帽の一言しかない。
今回のBerryzの新譜『告白の噴水広場』も、ベタすぎる青春群像がこれでもかと描かれ、
ボクのような、「お好きな方にはたまらない」歌詞世界が展開されている。


放課後からはしばらく経って、あたりが薄暗くなり始めている噴水広場。
噴水はもう止まっていて、公園を行きかう人も少なく、あたりは静けさに包まれている。
2人は木製のベンチに並んで腰かけて、お互い何も言葉を発する事なく、
噴水のある池をじっと見つめたまま、ピクリとも動かない。
気まずい沈黙。少しひんやりとした風が二人の間を吹き抜け、池の水面を揺らす。
そしてサーッという風の音が二人を包み込んだ次の瞬間、女の子がポツリと呟く。
「わたし、あなたの事…」


タイトルからワンコーラス目までを聴いただけで、少なくともこれだけの場面を想像させるのだから、
つんく歌謡恐るべしである。ちなみに、続きとこの恋の結末は、曲の方でご確認願いたい。


生きてきた記憶の共有感と、そこから波及するシチュエーションのズバピタ加減。
つんくの奏でる上質のアイドルポップスに、生粋のアイドル好きであるボクの琴線が、
激しく揺さぶられるのは、ある意味必然であり、
ボクにとってのツボな歌詞世界を、未だ惜しみなく提供してくれるつんく♂という表現者
少なくともボクの中では、まだまだ死んではいない。

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