372「潮時」



1st GAM〜甘い誘惑amazon.com/購入もできます)



なにもこういう事が起こったから急に言う訳ではなく、
これは少し前にも書いている事なのだが(#276「藤本美貴という個性」)
藤本美貴という個性を、そろそろ「縛り」から解き放ってやってもいい頃なのではないかと、
ある時期を境に、ボクはそう思うようになった。


その時期とは言うまでもなく、GAMが本格的に活動を始めた頃であり、
その、まるで水を得た魚の如き、生き生きとした振舞い、
「さすがはソロを経験してきただけの事はある」と思わず感嘆させられた、類まれな歌唱表現。
そしてなにより、作り手があえて求めた「生々しいセックス・アピール」を、
おそらくはそのイメージ通りに、完璧な形で具現化している姿を目の当たりにした時、
アイドルたるモーニング娘。という存在に彼女の身を縛りつけておく事は、
彼女にとっても、そしてモーニング娘。にとってみても、決していい要素にはならないだろうし、
状況が許せば、彼女を完全なソロ・藤本美貴として、ぜひ再起動させてやって欲しい。
今回、GAMのアルバム『1stGAM〜甘い誘惑〜』を聴き、
しばらく影を潜めていたそんな思いが、今、再燃し始めている。


GAMの見事とも言うべき完成度の裏にあるもの。それは二人の持つ、天性の「カンの良さ」である。


その時、自分に求められるものが何なのか、自分の力で瞬時に判断し、
さらにそれを、何の躊躇もなくサラリとこなせてしまう適応性と柔軟性。
GAMの二人は、その能力をデビュー間もない頃から垣間見せていた。
そして、それはすなわち、ソロ活動をする者には欠かせない、言わばソロの必要資質であり、
その部分に秀でていたからこそ、松浦亜弥は一大ムーヴメントを巻き起こし、
藤本美貴も「ミキティ」として、一般的に名が知られる存在となったのである。
ところが藤本の場合は、ソロを中断してモーニングへと入った事により、
ソロ時代に培った「個」としての身の置き方を、半ば封印する事を余儀なくされ、
グループの中での全ての行動が、チームプレイの一環に組み込まれるようになってしまった。
そこに、消そうとしても、本能として滲み出てしまう「ソロ気質」とのアンバランスが生じ、
およそアイドルらしからぬ言動を繰り出す、自由奔放な存在としてクローズアップされる事が多くなった。
そこにきて、GAMが誕生し、改めて彼女のソロ適性の高さが浮き彫りになった今、
モーニング娘。は、もしかして、彼女にとって「足かせ」でしかないのかも知れない。
そう、ボクは思うようになった。


いい機会、と言うと非常に不謹慎だが、今回の騒動を起点として、
本格的に彼女のソロ活動再開への道筋を作ってやるべきだろうとボクは思う。
今やモーニングにとって、彼女はなくてはならぬ存在だが、
ソロやGAMのイメージを引きずった形のまま、モーニング娘。として夢や希望を唄うというのにも、
やはり限界はあるだろうし、モーニングの側にしてみても、直接的な性表現を繰り出す者が、
同じグループでどうこうされると、イメージ的に悪影響が出るとも限らない。
そしてなにより、そんな不安定な存在が、今モーニング娘。リーダーだという事実に、
危うさを感じずにはいられないのである。

92817