371「ご意見へのレスポンス」




前回のテキストには、大変多くの反響があり、正直驚いている次第。
それだけ多くの人に読んでいただいたという事であり、感謝感激の一言である。
今回は、そんな前回のテキストに対して寄せられたコメントの一部にお返事を。
本来、全てのコメントにレスポンスできればいいのだが、なかなかそうもいかない為、
今日は、その中でも特に「アイドルとの疑似恋愛」という部分にスポットを当ててみた。


>『アイドルは男とつきあってはならないなんてお前の妄想に過ぎない』


>『アイドルは疑似恋愛の対象なんて言う身勝手な妄想を押しつけているような、
> こんなキチガイが一般的だとしたなら、そりゃアイドルが廃れるのは当たり前ですよね。
> 異常な考えをしているこういう人間が減らない限りハロプロがもう一度隆盛するのは難しいのでしょう』


まずはこの2つのご意見(あるいは同じ方かも)について。
【アイドル=疑似恋愛の対象】だと定義づけたのは、ボクの身勝手な妄想でもファンの劣情でもなく、
「昔の芸能界の偉いヒトの大いなる知恵」であるという事を、まずは理解していただきたい。
つまり、ボクたちが生まれる遥か前から、アイドルというものは疑似恋愛の対象なのである。
疑似恋愛。それすなわち、ファンにとっての「アナタだけのワ・タ・シ」という事であり、
そんな存在が男を作ったり、あろう事かセックスするなんて、もっての他。
百歩譲って、そういう行為が許されたとしても、絶対に露見させるような事があってはならない。
たった一人でも「嗚呼、幻滅」と思うファンがいれば、それはアイドルとしてダメな事なのだ。
だから、アイドルが不義理をしたら批難されるのは当然の話。
そんなの古臭い!前時代的だ!キモい!と歯ぎしりする人も多いかも知れないが、
アイドルとはそういうものなので、仕方がない。
というか、そういう部分でボクやファンに批判をぶつける事は、お門違いもいいところだと思う。
なにせ、ボクたちは「与えられたもの」にしか熱狂していないのだ。
疑似恋愛を売り物にした、男と付き合う事など許されないアイドルという存在は、
あくまでも、事務所が作り上げて、ボクたちの前に提示したものであって、
ボクたちはその「製品」を愛でているに過ぎない。ボクたちが作り出したものではない以上、
そういうアイドル像について文句を言われても、ちょっと困ってしまう。


>『アイドルに処女幻想を求める価値体系も理解は出来ますが。
> そういう素朴な「アイドル概念」を脱構築しつづけるのがモーニング娘。であり、
> 藤本美貴もまた紛うかたなきモーニング娘。なのだと思います。
> 「アイドル概念」というイデオロギーに縛られるより、
> モーニング娘。という現象そのものを受け止めるほうをわたしは選びますし、そのほうが生産的で楽しいと思っています』


ここでいう「アイドル概念」というのが、古臭い処女性信仰であったり、疑似恋愛対象という側面も含めた、
前時代的な(と言われる)アイドルビジネスのセオリーの事を指すのだとすれば、
モーニング娘。が「アイドル概念」を脱構築したという事実を、少なくともボクは聞いた事がないし、
多くのファンや、あるいは一般層であっても、モーニング娘。がアイドルという概念を脱しつつあるとか、
あるいはもっと直接的に「アイドルではない」みたいには、誰も思ってはいないのではないだろう。
誰がどう見たって、彼女たちは紛う事なきアイドルグループである。
確かにミリオンヒットを連発したり、楽曲が先鋭的だった部分においては、
過去アイドルらしからぬ面を見せた事があった、と言えなくもないだろうが、
モーニング娘。の活動が、徹頭徹尾「アイドル概念」に彩られたものであるという事は、
あらゆる角度から検証を試みても、これは火を見るより明らかである。
一例は、矢口真里が脱退時に出したコメント。ここには転記しないが、探してもう一度読んでいただきたい。
ゴーストが書いたものであれ何であれ、大本営としてあのコメントを出した以上、
彼女たちを「非アイドル」と呼ぶには、ちょっと無理があるのではないかとボクは感じるのだ。


アイドルへの疑似恋愛感情というものは、先にも述べたように、ファンが能動的に発生させたものではなく、
あくまで事務所が戦略としてこちらに仕向けているものであって、
むしろボクたちファンは、それに対して受動姿勢であると言える。
無論、それを受け取るか否かは個々の判断次第な訳だが、受け取る者が1人でもいる以上は、
アイドルという存在を提示した側(つまり事務所と演者)は、
最後まで責任を持って、求められるアイドル像を供給し続けるべきであり、
万が一それが何らかの形で滞ったならば、そのフォローは、何をおいてもしっかりとやりきるべきだとボクは思う。
辻の時も、今回の藤本も、そういう面において、実に不細工な後始末に終始しているように思えるし、
だからこそ余計に、残念でならないのである。
それとも「男と付き合うのも問題ないモーニング娘。」とか「疑似恋愛感情を完全否定するモーニング娘。」が、
これからのスタンダードになっていくのだとしたら、
そんな安っぽいモーニング娘。なんて、おそらく見る気も起らないだろう。

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