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実は、ここまでの間に、数日を要して膨大な行数のテキストを書いていた。
だが、あるきっかけから、どんな理論武装をしても絶対的な説得力を有する結論が導き出せないという事に気がつき
その瞬間、急に全ての文章に対しての虚しさがこみ上げてきた。そして、衝動的に文章の全てを削除し、
あろうことか、定期のアップロードを放棄してフテ寝してしまうという暴挙に出てしまったのだった。
そして、今、この時間に起きぬけ、事の重大さに戦きつつも、
どこかスッキリとした気分で、この言い訳コラムを執筆しているという訳である。


虚しくなった理由はフライデーの記事だ。


いや、内容自体にもはや何を言うつもりはなく、そこは「アホか」の一言しかない。
ただこの記事が出た事によって、既存のアイドルという概念が、
一般人や一部のファンのみならず、それを演じる彼女たちからも完全に骨抜きにされてしまっているというのが、
改めて浮き彫りになった事。これがとにかく重かった。


今さら、アイドルとはこういうものですと説明するのも、
実は面倒くさかったりするのだけど、まああえて定義づけるとすれば、
「その若さや可愛らしさを主たるセールスポイントとし、ひとつの種類に拘らず、
 多彩なジャンルの芸能活動をこなす、主に10代の若い女性(男性)の芸能人」

という事にでもなるだろうか。当然ではあるが、「若さやルックスの良さをセールスポイントにする」
という文言の中には、「疑似恋愛」や「処女性」という要素が、もちろん多分に含まれている。
ただ、こんなものはあくまでも物理的な広義でしかなく、
要は、事務所がそんな感じのアイドルという方向性で、その女のコを売り出した時点で、
古臭かろうが前時代的であろうが、そのコはもうアイドルと呼ばれる存在であり、
事務所が「もうヤメ」というまでは、何があってもアイドルであり続けねばならない。そういう運命なのだ。
そして、そんな運命を小さな背中に背負わせる、芸能界という場所に望んで飛び込んできたのは、
他ならぬ彼女たち自身なのである。


今さら、アイドルなんて古いとか旧態依然としているとか、我々がワーワー言ったところで、
当たり前だが何も変わらないし、アイドルはウンコしない男いないセックスしないの「幻想原則」は、
アイドルという存在がこの世に出続ける限り、永久に保持され続けるのである。
そして、そういう浮世離れしたものも全てひっくるめて、ボクたちはアイドルというエンタメを楽しんでいるのだ。
だからこそ、興醒めも甚だしい「不粋」を見せられると、どうしても不快感を抱いてしまう。
つまり、「口には出さんが、そこはお約束の部分だろうが」という事である。
今、ボクが悲しいのは、アイドルとしての存在責任のようなものが、全く欠落してしまっているメンバーが多いという事。
何度も言うが「アイドルやりなさい」と言われたら、もうアイドルであり続けなければならない。
彼女たちには、それが宿命づけられているし、その姿というものをボクたちは応援している。
その構図がどうしてもイヤで、もっと自由に生きたいというのなら、
何としてでもアイドルという立場を辞した上で、そうするべきだろうし、
それとも、アイドルを辞する事が目的で、あえて存在責任を放棄するような行為に及んでいるのだとすれば、
これほど我々が舐められた話もない。


普通の少女に、アイドルという仮面をかぶせ、処女性で人格を縛りつけて悦に入る。
ある意味においては、アイドルというのは惨たらしい世界ではある。
だが、そんなアイドルが、ボクたちに様々なものを与えてきてくれたのもまた事実。
そして、その分、ボクたちもさまざまな形で彼女たちを支えてきた。
その「いい関係性」が、今、もろくも崩れようとしているのを目の当たりにしながら、
ボクは自分が歩んできたアイドルファンとしての人生が、
本当に正しいものだったのかどうか、自信が持てないでいるのは事実だ。


という事で、前々回のコラムにコメントをくれた至上さん。
本格的なアイドル論は、またいずれちゃんとした形で上げますので、今回はこれでご容赦を。

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