363「ボクラハヒトミニコイシテル」



吉澤ひとみ、モー娘。卒業!ソロとして「明日から出発します」(oricon)



前回も話したように、自分の感情を少しづつあらわにできるようになって、
いい意味で「人間臭さ」を感じられるようになった、よっちゃんこと吉澤ひとみが、
自らの卒業のセレモニーで、どんな姿を見せるのか。あるいは、普段からは考えられない激情が見られたりもするのか。
なんて、ちょっと妙な期待感を持ってコンサートに臨んだのだけれど、
まあ予想通りというか何というか、涙もあるにはあったけど、
ステージ全体を包んでいたのは、何といってもみんなのハッピーな笑顔だった。


パワフルなキラーチューンのメドレーが終わり、
それまでの熱狂が嘘のように、一瞬にして訪れる静けさ。そして暗転。
次の瞬間、会場全体が純白の花びらで埋め尽くされた。


「男役」の出で立ちで、たった一人舞台に現れた吉澤ひとみが、その光景に顔を歪ませ、涙を堪える。
でもそれでも歯を食いしばり、なんとか涙を瞳の奥にしまい込むと、ひとつため息をついてから、
流れてきたイントロに自然に呼応するように、伸びやかに唄い始めた。


         出会いにありがとう
         毎日元気でいるから
         未来も 笑顔だわ


それから先は、いつもの「よっちゃんワールド」。
最後の最後まで一筋の涙も見せる事なく、よっちゃんは、見事なまでによっちゃんとして、
カラリ明るくモーニングを巣立って行った。


あの、どこまでも突き抜けた、彼女独特の元気さを、
もうモーニング娘。では見られなくなってしまうというのはとても寂しいが、
吉澤ひとみが、かつての先輩から受け継ぎ、あるいは、モーニング娘。のメンバーとして、
そしてリーダーとして、新たに作り上げ、残してきた様々な「財産」が、
藤本美貴をリーダーとする、次代のモーニング娘。に再び受け継がれ、
しかも今度は、それが海を渡り、遠く中国へと伝わっていくかも知れないという、壮大な可能性のこれが始まりでもある。


吉澤ひとみという定点から見通す未来。その呆れるほどの鮮明さは、
彼女がグループに注いできたパワーの源。「明るさ」に通じる。
彼女の存在がある限り、モーニング娘。から光は失われない。
そしてもちろん、彼女がグループからいなくなってしまったとしても、それは変わらない。


「命の灯台」――吉澤ひとみは、モーニング娘。をこれからもずっと照らし続ける。

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