344「『SEXY 8 BEAT』〜モーニング娘。8thアルバム」



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『7.5 冬冬モーニング娘。ミニ!』がリリースされると聞いた時、
「なぜわざわざモーニングがミニアルバムなのか?」という疑問と共に、
こんなタイミングで企画モノ的な作品を出してしまっては、過去のリリースタイミング等も考えて、
春のツアーまでに新たなアルバムが出るとも考えにくく、
「季節はずれの「冬冬」な曲で春のツアーを回すのだろうか?」という朧げな不安も抱いたりした。
曲のストックは豊富だし、まあなんとか格好は付けてくれるとは思っていたが、
新鮮さには乏しいコンサートになるかも…と、作品そのものの感想とは別の部分で、
そんな後ろ向きなイメージを強く感じていたりもしたのである。
それだけに、この『SEXY 8 BEAT』のリリースは、実に望外というか、嬉しい誤算。
しかも、その中身も、間隔が短い中での発表ではありながら、十分な充実感がしっかりあって、
「待ってました」の掛け声とともに、今、じっくりと味あわせてもらっているところである。
ただ、個人的には、作品に対してのネガティヴファクターもあった。
それは、ここ数作のアルバムに、必ず1曲は存在していた「後世まで残る名曲」を予感させる作品を、
今回のアルバムで見出せなかった事である。


例えば、『青空がいつまでも続くような未来であれ!』であり『レモン色とミルクティ』であり、
『友達(♀)が気に入っている男からの伝言』であり『好きな先輩』。


ボクが個人的に佳曲だと感じたアルバム曲は、
世間一般においても、だいたい同じような評価が与えられているように感じる。
つまり、発表されてずいぶん時間が経過した今なお、高い人気や評判を維持している「名曲」たち。
あくまで個人の嗜好の事なので異論もあろうが、概ね同意してもらえるのではないだろうか。
そして、これらの楽曲は、時間をかけ聴くうちに、いい感じになってくるという趣きではなく、
初聴の段階からすでに「名曲の予感」というものを存分に醸し出していたようにボクは思う。
そして、その予感の通りに、これらの作品は名曲となっていった訳だが、
今回のアルバムでは、残念ながらそういう予感を「ビビビと」感じる作品には巡りあえなかった。


もしかして、改めてアルバムを聴き込んでいくうちに、
「ああ、いいかも」と思わせるような曲も出てくるようになるかも知れないが、
それは、曲を噛みしめてみて初めて解る、言わば「後付け」の評価であって、
そうなってしまえば、ボクの場合、どんな曲であっても最終的には「いい曲」という事になってしまう。
ボクの中で別格視できる楽曲とは、前述の楽曲群に確実に存在した
「理屈ではない、なにか得体の知れない良さ」をもった作品であり、
アルバムリリースのたび、そういう曲を期待してきただけに、今回はちょっと寂しい気もしている。


せっかく待望のフルアルバムを手にしたというのに、文句ばっかり言って素直に喜ばない。
イヤな性格のファンだと自分でも思うが、そんな非生産的な思考もここまで。
あとはとにかく聴き込んで、自分なりにアルバムの良さにどっぷりと浸った上で、いざコンサートへ。
なんだかんだ言ったところで、そこは悲しい性。
アルバムのリリースを迎えたことで、俄然、テンションは上がってきているのである。

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