316「モーニング娘。誕生10年記念隊に思う」



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実を言うと、あまり乗り気がしない。


こんなエクスキューズなど必要ないだろうが、10年目を迎える事がめでたくないとか、
そんなもの祝いたくないとか、そういう事ではもちろんないのである。
グループのアイドルを応援するのに、グループそのものを愛でずして、一体何を愛でるのかと、
あくまでもグループ・モーニング娘。のファンとして、巷の「推しメン至上主義」に対し、
一貫したアンチテーゼを展開してきたといういささかの自負はあるし、
誰よりもモーニング娘。が好きなボクだからこそ、そのアニバーサリー・イヤーの重みもよく理解しているつもりだ。
だからこそ、10年記念隊というものに今ひとつテンションが上がらない。
10年という長い時間の中で積み上げてきた歴史。伝統。そして変わらぬ魅力。
そういったものを10年目の節目を機に振り返り、モーニング娘。の魅力を、改めて世に知らしめる…
10年記念隊のそんな企画意図は解らなくもない。
だが、それにしては、内容に「不備・不明」が多すぎるのではないかとボクは思うのである。


まず2期メンと4期メンが記念隊に招聘されていないのがそもそもおかしい。


10年のモーニング娘。の歴史を振り返る時、現在のグループ構造の基本的大前提となっている
「追加メンバー制度」の礎となった2期メンバーの存在を抜きにしては絶対に語れないし、
モーニングが一気にスターダムにのし上がり、グループが世の少女たちに憧れを抱かせるような
存在になってから初めて追加された、言わば「モームス世代」の最初である4期メンバーもしかり。
しかも、両期とも個性あふれるメンバー揃いとくれば、尚更、彼女らが居ない意味が解らない。
まして、2期も4期もメンバーはハロプロ内に健在なのだから、絶対に存在しなければならない部分が、
当たり前のように欠落しているのは非常に残念であると言わざるを得ない。
今さら7人8人が多いとかそういう訳でもないのだし、もう少しなんとかならなかったものかと本当に思う。


そして、楽曲の「MY ASIA」の意味もイマイチよく解らない。
プロデューサーが、アジアへの進出を匂わせるようなコメントをしていたので、
あるいはこの楽曲を引っさげて…という事なのかも知れないが、楽曲単体で考えればとても微妙だ。
単純に「10年目のモーニング娘」と「僕らが生きるMY ASIA」の接点がよく解らないし、
このなんとも言えない「取って付けた感」には、言い方は悪いが、
結成10年記念にかこつけての、いつものユニット商売なんじゃないの…などと勘ぐってみたくもなる。
なにより、例えばこれを、毎年恒例のスペシャルユニット(当然そこには石川梨華がいる訳だが)が唄うのと、
どういう違いがあるのか、有り体に言ってピンと来ないのである。
昨年リリースされた『プッチベスト7』のTR-1にリミックスが収録されているが、
あそこまでベタでなくとも、楽曲に多少なりともアニバーサリーを意識させて欲しかったし、
今回の楽曲で、「モーニング娘。の10年の歴史を存分に!」の作り手の意図を汲み取るには、
イマジネーション力と、物わかりの良さを相当発揮させないと骨が折れるだろう。


そもそも10年という区切りを殊更に強調する必要性を、ボクは余り感じない。
もちろん、記念すべき年ではあるし、改めてモーニング娘。の辿ってきた道のりを振り返り、
そしてまた新しきを知る良い機会として、10年の区切りは有意義だ。
だが、モーニング娘。の歴史は今も更新中であり、
そのタイムスタンプの全ては、未来へ向けての通過点に過ぎないのである。
今年から来年にかけ、10周年にまつわる様々なイベントも行われる事だろうが、
10年という時間を反芻するだけで終わらず、そこから先のグループの有り様まで全て含めて
モーニング娘。をじっくりと見つめ直す事。
それこそが「本物のファン」の、正しい10周年の迎え方だとボクは思うのだが。

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