314「激動の果てに」



Hello!Projectより『モーニング娘。』4期メンバー「吉澤ひとみ」卒業のお知らせ(オフィシャルサイト)



少し持て余し気味だった正月休みの後半。見たいテレビもとうとう無くなってしまった深夜に、
ふと思い立って、パソコンの中の音楽ファイルを整理し始めた。
整理と言えばまあ聞こえは良いが、そんな分別作業に勤しんでいたのも始めのうちだけ。
まあお決まりというかなんというか、時間を経るごとに、だんだんと雰囲気は「真夜中の音楽鑑賞会」の様相に。
そして、夜も白々と明け始め『愛の第6感』を聴き始める頃になると、
マウスに手をかける事もしなくなり、ボクはただじっとスピーカーに耳を傾けていた。


当時のリーダー・飯田圭織と、グループの屋台骨を支えていた石川梨華が卒業を発表し、
「オリジナルメンバーがグループから居なくなる」という事が、
あらゆるところで盛んに言われた頃にリリースされたのが『愛の第6感』だった。
時にして、2004年の暮れ近く。経過した時間は、短いとは言わずとも、決して長いという程ではない。
なのに、聴こえてくる歌声のあちこちには、なんとも言えない懐かしさが溢れていた。
アルバムが出てから3年弱。モーニング娘。が、曲折を経てその佇まいを変化させてきたその時間は、
そのまま、吉澤ひとみがリーダーとしてグループを束ねてきた期間でもあった。
その事に気がついた瞬間、一報を聞いた段階から全くのアンリアルだった彼女の卒業話が、
とてつもない現実感と共にボクに襲いかかり、一人きりの部屋の片隅、切なさに思わず躰を震わせるのだった。


この『愛の第6感』以降の、モーニング娘。を巡る動きは、あまりに目まぐるしいものがあった。


飯田が無事に卒業し、矢口真里をリーダーとする新体制が動き始めたのもつかの間、
まさかの矢口脱退劇。そして、半ば無理矢理の形で、
急遽リーダーを受け継ぐ事になったのが、当時はサブリーダーだった吉澤ひとみだった。
コンサートのステージで、前任者の起こした不祥事に対し、
深々と頭を下げて詫びる事が、彼女のリーダーとしての初仕事。
それは、数日後に石川の卒業式を控えるという、ツアーの「山場」での事だった。
今さらどうこうと矢口を責め立てるつもりもさらさらないが、
あまりに身勝手な行動のとばっちりを受けた吉澤にとって、これは相当辛い仕打ちだったに違いない、
その後も、ガッタスで共闘した紺野あさ美、かわいい妹分であった小川麻琴の卒業、
さらに、7期メン・久住小春、8期メン・光井愛佳の加入と、有史以来の激しい動きだったこの3年。
悪い言い方をすれば、大変な時期にグループを「押し付けられて」しまったのが、吉澤ひとみというリーダーだった。
しかも、一方ではガッタスのキャプテンとして、今や事務所のドル箱興行である
フットサルを盛り上げる使命も同時にこなさなければならず、
一時に比べて、驚くほどに細くなってしまったその身体にかかる負担は、相当なものだったに違いない。


だが、そんな激動の時代に生きたグループを、
吉澤は持ち前の明るさとバイタリティでしっかりと纏め上げてきた。
いや、彼女でなければたぶん、この3年を無事に乗り切る事など、到底できなかっただろう。
それだけに、願わくば、彼女にはリーダーとして、この先もグループを引っ張っていって欲しかったし、
こんなにもあっけなく「その時」が来てしまうとは、全く想像だにしていなかっただけに、
ものすごく。ものすごく残念だし、そして、「天才的にカワイイ」4期のオーディションの頃から見続けてきた
愛着もひとしおのメンバーがモーニングを去ってしまうのは、とても寂しい気分だ。
しかし、モーニング娘。が次の一歩に踏み出す為に避けて通れない、それは道であり、
この別れが、グループにとっても、そして吉澤ひとみにとっても、最終的にハッピーな結果を生むのだと今は信じて、
これからの4ヶ月、悔いのないように過ごして行くことが「正解」なのだとボクは思っているのだ。

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