306「『リボンの騎士』とは一体なんだったのか〜第2場」



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リボンの騎士 ザ・ミュージカル』という作品の「肝」となったキャストは誰であったか。


さまざまな物の見方はあるだろうが、
ボクは敢えて、主人公・サファイアを演じた高橋愛ではなく、
その相手役。フランツ王子のトリプルキャストの一角を担った、
石川梨華こそが、作品の肝であったと言い切ってみたいのである。
もちろん、このミュージカルで本格的に華開いた、
高橋愛という大きな「才能」を、なおざりに語るつもりは毛頭ないし、
今回のミュージカルの成功は、高橋の類まれな「舞台女優としての資質」に
寄与する部分が大きかったと言って差し支えないと思う。
だがそれ以上に、石川梨華というキャストがなければ、
ミュージカルの成功は、あるいはあり得なかったかも知れないとボクは考えるのである。


後の2人(安倍なつみ松浦亜弥)のようなスポット参戦的な立ち位置ではなく、
美勇伝として、石川がレギュラーキャストの中に名を連ねていたのは、ご承知の事だと思う。
そして、フランツを演じない日の彼女は、牢番・ピエールとして劇中に登場していた。
物語の中盤に登場する、このピエールという役どころは、
サファイアやフランツや扇を持った淑女たちとは全く正反対の位置にいる、
言わば「どぶねずみ」のような存在。
だが、その存在は、その後の舞台の盛り上がりを大きく左右する、極めて重要なポイントであり、
サファイア親子に対し、蛮勇を奮うピエールが発する科白と歌がなければ、
おそらく、このミュージカルの大団円はありえないものだった。
ここまで書けば、だいたい何を言いたいかは解っていただけるとは思うが、
サファイアの好敵手として、ほぼ全編にわたって物語に登場するフランツと、
ストーリーの山場へ向けての伏線となる重要な役どころのピエール。
石川梨華は、ストーリーの軸となり、しかも全く性質の異なった2つの役どころを、
何の違和感もなく、完璧に演じきったのである。
フランツの立ち振る舞いをこなすだけでも、相当労力のいる作業なのに、
同時進行で、ピエールという人格も形作らねばならない。
本業の役者でも、いささか骨の折れそうな、難しいミッション。
それができたのも、ハロプロのオールラウンドプレーヤー・石川梨華だからこそ。
他のどのハロプロメンバーであってもきっと、今回の石川梨華の代わりにはならなかったであろう。
彼女こそ、今回のミュージカルの肝だ。とボクが言う所以はそこである。


思えば、さまざまなユニットを渡り歩き、それぞれで「らしさ」を振りまいてきた彼女。
個別のケースをつぶさに見れば、彼女の存在が「活きた」ユニットは少なかったかも知れないが、
各ユニットでの活動を通して得た経験は、彼女の中に着実に蓄えられ、
それが今回実を結び、大輪の華を咲かせる結果になった。
都合よくいろいろな場所に使われる彼女の存在を、可哀想に思った事がボクにもあったが、
そういうオールマイティーな姿勢こそが、たぶん、石川梨華という個性の正体なのだと思うし、
そんな彼女のパーソナリティを、絶妙に脚本や演出に落とし込んだ、
作り手諸氏の、これはまさにファイン・プレイであると言ってもいいだろう。

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