293「後藤真希 コンサートツアー 2006秋〜G-Emotion〜」



後藤真希 コンサートツアー 2006秋〜G-Emotion〜ハロプロ覚書)



という事で、ごっちんのコンサートに行ってきた。


東京に出向く所用があって、そのついでと言ってしまうとそれまでなのだが、
考えてみると、昨年のキャプテン公演を除けば、
2004年の春ツアー以来、もう2年も彼女のソロコンサートを見ていない訳で、
身体がそろそろ後藤真希を欲していた時期だったというのもあるし、
最近の彼女に関する当コラムでも記しているように、
なんというか、セクシー一辺倒という態勢になりつつある彼女が、どこに向かおうとしているのか。
そのパフォーマンスの中に、彼女の活動の「真意」を感じたいという思いも少なからずあったので、
何はともあれ東京厚生年金会館に向かう事にしたのだった。


今回のコンサートの中身を簡単に説明すると、「豪華2本立て」といった感じだろうか。
もちろん、繰り広げられるのは、全篇に渡って後藤真希のパフォーマンスである事は間違いないし、
組み立てられたセットリストが、流れとは関係なく2部構成になっているという事ではもちろんない。
つまり、オープニングからの前段部分と、キラーチューンが津波のごとく押し寄せる後段部分とでは、
ステージの「カラー」や「匂い」といったものが、全く異なるというか、
まるで違うタイプのステージを、連続で見ているかのような趣きを持っているのである。


1曲目が最新シングルの『SOME BOYS! TOUCH』。この曲を始めとして、
前半戦は、後藤真希のレパートリーの中でも、特にウェットなナンバーを中心に、
彼女と4人のダンサーが、圧倒的な表現力で、cool&sexyを矢継ぎ早に見せていく展開となる。
舞台と客席が一体となって作り上げるLIVEというよりも、
彼女がイニシアティブを握って、パフォーマンスを観客たちに披露する、
極上のショウ・タイムといった雰囲気で、まずはステージが進んでいくのだが、
その光景を見ながらボクは、この完成度の高いステージを本当の意味で味わえる、
もっと言えば、ステージで彼女たちが表現したい事を理解して楽しめる観客って、
実はほとんどいないのではないだろうか…とか、そんな風に思っていた。
ごっちんと4人のダンサーが紡ぐ前半部分のステージは、
コールを入れるとか、ヲタ芸とか、サイリウムやボードを振るといった、
コンサートにおける、いわゆる「参加行動」の入りこむ余地はほとんどないと言っていい。
ごっちんの歌、イリュージョン、ダンサーの妖艶なパフォーマンス。
ステージ上で繰り広げられる全ての事を、一枚の絵画の如く鑑賞する姿勢でないと、
おそらくはコンサートを十分に楽しむことはできないだろう。
そして、コンサートを見ながら「はっちゃけたい」などと、即物的な欲求で会場にやってくる、
多くのファンたちにとっては、そのパフォーマンスはあまりにも本格的かつ上質過ぎて、
いささか贅沢すぎるのではないか、というような気がしなくもないのである。
でも、ごっちんは優しいから、そんな即物ファンを見捨てるような真似はもちろんしない。
ライブの後半戦では、それまでの「よそ行き感」がウソのように雰囲気が一変。
うわさのSEXY GUY』から『スクランブル』という、これまた極上ともいえる
キラー・チューンの連弾をブチかまし、ボクたちをいつものヲタモードに引き戻してくれるのである。
前半が13曲に対して、後半はアンコールまで含めても6曲と、曲数的にはそんなに多くはないのだが。
なにせ持ち歌の中でも、最も熱狂度の高い楽曲ばかりを集めた、いわば厳選素材の数々だけに、
前半物足りなさを感じていたとしても、その帳尻は十分合う恰好という訳である。
かくして、2本立てを存分に堪能し、充実感に満ち満ちたボクは、
後藤真希に対する考えを改めざるを得ないと、今、率直に感じている。


彼女がセクシーとかエロといった方向に偏って活動することは、
決していい要素ではないという持論は、ボクの中では今も変わらない。
だが、後藤真希が歌い手として、表現者として、ワールドワイドに成長していくのに
必要不可欠な「経験値稼ぎ」の一環としてのエロ路線だとするならば、
そこに苦言を呈する事は、彼女の伸びしろを奪ってしまう事にもなりかねず、
そんな事態はボクの本意などでは全くない。
それに、『スッピンと涙。』の大サビをアカペラで唄い終え、
感極まり思わず涙を零した彼女の姿を見て、
彼女が、このままただのエロ路線で終わるような歌い手ではないという事を、改めて実感もしたし、
これからは、もう少し肯定的に、今の後藤真希と向き合って行こうと、そんな風に思っている。

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