284「桃色のユウウツ」
モーニング娘。の秋のツアーを見てきた。
MCやセットリストについての詳細なレビューについては、
ボクなんかよりも遥かに上手に、そして情感たっぷりにレポートしてあるブログやサイトが、
たくさんあるので、必要であればそちらを参照してもらうとして、
例によって今回も、当コラムならではの視点でコンサートを切り取ってみたいと思っている。
とは言うものの、どこを切り取るかの選択には、実は相当苦労したのである。
つまり、それほど今回のコンサートには、良くも悪くも見所となるべき点が多いという事であり、
それ即ち、ステージの内容がいつになく濃いという事でもある。
で、いろいろ迷っていて、結局コンサートの一番どこを見ていただろう…と考えてみた時、
やはりそれは、道重さゆみをおいて他にはなかったのである。
人数減の恩恵であれなんであれ、ソロパートが格段に増えた事は、
彼女のファンとして素直に嬉しく思うし、その抜擢に呼応するべく、
彼女自身もまた、メキメキと歌とダンスの腕を上げているのを、
ステージから遠く離れた2階席からでも、はっきりと実感できた事は、
今ツアー初参戦における、大収穫と言っていいだろうと思う。
特に『涙が止まらない放課後』で、サビのソロパートを唄い上げる姿は本当に堂々としたもので、
「あの頃の」彼女を知っている者にとっては、感慨を抱かずにはいられなかった。
ただ、彼女に対してだけは、永遠のイエスマンであり続けたいボクだけど、
ちょっと気になった部分も無くはなかった。
道重さゆみの、自分スキスキキャラの集大成「重ピンク」と、
その良き相棒「こはっピンク」の最強ユニットと言えば、
言わずと知れた、ピンクの衝撃・レインボーピンク。
そして、そんな二人が今回のツアーで披露しているのが、
今度リリースされるミニアルバムにも収録される新曲『わ〜MERRY ピン X’mas! 』である。
この曲がセットリストに入っているという情報は前もって解っていたし、
なにより、アルバム発売から春ツアーのステージにかけて、二人の放つ「ピンクインパクト」に、
さんざん打ちのめされて来たのは、誰でもないボク自身であった。
その第2弾と聞いて、期待感を膨らまさない人間などこの世にはいない。
まして、モーニング娘。関連としては、実に久しぶりとなる、ベタなクリスマスソングとなれば、
なにをおいてもまずはコレ、となるのが人情というものであろう。
だが、実際に目の当たりにしたレインボーピンクの2発目は、
なんというか、想像以上に小ぢんまりとした印象だった。
芸能に限らず何事でもそうだが、2回目というものは、
比較できる物差しがないので、必然的に1回目が比較の対象になってしまう。
だから、2回目は1回目よりもさらにベターな展開が要求されるものである。
そういう意味で、レインボーピンクは、最初が少し強烈過ぎたような気がするのだ。
明らかに常軌を逸したと言っていい、ビビッドな風情。
そして、突き刺すような、二人の剥き出しの個性のぶつかり合い。
さらに、そこに輪をかける、アイドル好きのつんく♂だからこそ書けた、
これでもか!というくらいコテコテのアイドルポップス。
あの、三位一体「超絶桃色レーサービーム」を越えるウエポンを繰り出す事は、
さしものレインボーピンクとて、難しい事だとボクは思うし、
案の定というかなんというか、あの春先の強烈な印象はやや薄まった感があった。
無論、デキが良くなかったという訳では断じてないのだが、
なんというか、レインボーピンクとはこういうものだ、と、
その存在が「形式化」されてしまったような部分をすごく感じたのである。
春先の彼女たちとは、似ているが少し違う。なんというか、より職業的になったというか。
それは、彼女たちの表現力が向上した事の証なのかも知れないが、
個人的には、もっとハチャメチャにやってもいいかな、と思ったりもするのである。
まあこんな事をシレっと書いてはいるが、
ライブ中、ぴょんぴょん動き回る二人の姿を凝視しながら、
顔のニヤケを抑えきれなかったのは、何を隠そうボクだったりするのだが。