274「文化祭雑感」
熱っちぃ地球を冷ますんだっ!モー娘。がエコイベントスタート(サンケイスポーツ)
文化祭に行ってきた。
開催直前に運悪く風邪を引き、結局参加できなかった昨年の雪辱を果たすべく、
今年はしっかり見てやるぞ!などと、
少々気負い気味に、会場であるパシフィコ横浜に向かった。
だが、入場してわずかに数十分。
一通り会場全体を回ったところで、早くも身を持て余したボクは、
やがてフードコートの椅子に腰を下ろし、
遠くに見えるハローステージをぼんやりと見ながら、
売れ残りですっかり温くなってしまっている缶コーヒーを買って、一人寂しくすすっていた。
グッズを買おうにも長蛇の列。何か食べようにも長蛇の列。
ブースの置かれていない空きスペースには、コンサ会場前よろしくヲタの皆さんがダラダラと溜まり、
ステージをわざと観覧場所の外から見ようという、
いわゆる「ガヤヲタ」は、推しメンが出る出ないに関わらずピョンピョンと飛び跳ね、
流れなど全く気にせず、自分の気が済んだら、さっさとどこかへ消えていってしまう。
まあ、そういう空間だと解ってここまでやって来ているという弱みもあるし、
別に何も言うつもりもないが、いろいろな事が重く身体にのしかかるような感じで、
ものすごくテンションが下がったのは事実である。
そしてもう一つ。ボクの気持ちを重くさせたものがあった。
ハローステージで彼女たちが演じた、『続・世界大温暖化劇』。
近未来の日本が、温暖化の影響でパニックとなっている姿を通して、
現代に生きる者たちへの環境意識に警鐘を鳴らそうという趣旨の寸劇で、
タイトルからも解るように、昨年の文化祭で披露された劇の続編である。
特に最後の回などは、メンバーがアドリブを連発し、
それなりに盛り上がった、今回の文化祭の目玉の一つであった訳だが、
ボクの中で、根強い引っ掛かりを感じずにはいられなかった。
まず基本的に、物語そのものが「環境破壊が進んで有事があった後」という設定で、
彼女たちが演ずる世界が、決して明るい未来ではないというのがどうかと思うし、
法律でクーラーが付けられなくなったから、団扇で過ごさざるを得ない。
海面上昇で都会が住み難くなったから、田舎へと引っ越さざるを得ない。
やがて住みやすい土地を求め、日本を捨ててシベリアなどへと脱出する。
…など「このままで行くとやがて地球は大変なことになりますよ」という、
負の部分だけが大きくクローズアップされるばかりで、
前向きに、明るくなれる要素が話の中にほとんど盛り込まれていないのである。
確かに、起こりうる事態に対して危機感を持つという事は大事だが、
あまりにネガティヴな世界観過ぎやしないだろうか。
しかもそれを、ポジティヴさが売りのモーニング娘。が演じるというこの矛盾。
劇を見るうち、「なんでこんな重い気分にされなきゃならんのだろう…」と、
熱演の皆さんには申し訳ないが、いささか見るのが辛くなったのは、偽らざる本音である。
前にも書いたが、文化祭を通じて環境保護を真剣に考えよう!
なんていうファンなど、おそらくものすごく少なくて、
来場している皆は、もっと違う物をイベントに求めている筈なのである。
おどろおどろしい、いかにも世紀末的な雰囲気の中で、
環境破壊の恐ろしさををマジトーンで啓蒙するモーニング娘。を見るために、
ボクたちはわざわざ横浜にまで行った訳ではない。
ガヤヲタは月島きらりで芸を撃ち、地べたに座ったヲタたちが、
ステージになど目もくれずヲタトークに終始するのも、
根本的なイベントの在り方に問題がある事の、裏返しなのではないかとボクは感じた。
閉会式で、エコモニ。姿の石川梨華が、真剣な顔をして
「このままでは地球は死んじゃうんです」と呟いて、
会場は水を打ったように静まり返っていたが、そういう事ではないと思うのだ。
「環境がヤバいです。もっとエコしましょう!」
そんな、明るくポップな感じで環境問題を取り上げるからこそ、
モーニング娘。やハロプロが、その担い手となる意味があるのであって、
そんなPRの仕方の方が、ヲタの耳目は絶対に集まるし、
エコ推進にも絶大な効果があるとボクは思うのだが。
来年があるかどうかは解らない。だが、もし仮に開催されるとして、
希望を言えるのならば、それはただ一つ。
「来て、見て、楽しくなれるイベントであって欲しい。」
当り前のそんな事を、望まなければ叶えて貰えないというのだから、
これは本当に困ったものである。