256「不遜」



リボンの騎士 ザ・ミュージカル(公式サイト)



最近、気になった発言がある。
まぁ、普通の人ならきっと、気にもならないような事だろうけど、
ボクにとって、それは、ちょっと聞き捨てならぬ発言だった。


「このお仕事をお受けした時から、一番最初から望んでいたことなんですけども、
 観客の皆さんをビックリさせたい。『アイドル』というふうに思っていたものが、
 これだけのことが本気になればできるんだ、ということを訴えかけたいと思っていた」


あるいはお気づきの方もおられるだろうが、
先日のハロモニ。で、ミュージカルの稽古風景がオンエアされた際の、
演出・木村信司氏のコメントである。
この発言の中で、ボクが大いに引っかかった部分。
ポイントは、ボクがハロプロ以前からのアイドル好きだという点である。


歌も踊りも実力はなく、
見せるパフォーマンスも稚拙。
まぁ所詮は、アイドル。
でも、そんなアイドルたちも、ボクが演出することによって、
これだけのものを見せられるのですよ。


2行目の後半から3行目にかけての部分。
何度読み返しても、ボクにはそういう風にしか解釈ができなかった。
彼がどのような経歴を持つ演出家かは存じないが、
これはあまりに失礼な物言いだとボクは思う。
第一、アイドルがちょっといいパフォーマンスを見せたからと言って、
誰も何も驚いたりはしないものである。
少なくとも、ハロプロのファンたちは、
彼女たちに確固たる実力と華が備わっている事を知っているし、
それが、血の滲むような努力の上に成り立っているのだという事もよくよく解っている。
発言の拠り所は、彼の本領である宝塚歌劇団という事なのだろうが、
むしろ、宝塚よりも過酷に努力と結果を求められるのがアイドルという分野である。
その辺に暮らす一般人が、アイドルに対して稚拙なイメージを持つのは、
まぁしようがないのかな、とも思うが、
仮にもエンタメの世界に身を置き、表現を生業にしている者が、
「アイドルだから」というネガティヴフィルターをかけて、
公平な評価の否定や、事実誤認も甚だしい発言をするというのは、
はっきり言って情けない事である。


アイドルなんて…と浅はかに考えていた事を、彼が後悔してしまうくらいに、
モーニング娘。が、彼の思考を上回るほどのパフォーマンスを
これでもかと見せつけてくれる事を期待しつつ、
今は、ミュージカルの大成功を遠い空の下より祈るばかりである。