239『Ambitious! 野心的でいいじゃん』〜モーニング娘。30thシングル



Ambitious! 野心的でいいじゃんamazon.com/購入もできます)



モーニング娘。を。ハロプロを。そして芸能界を巣立ち行く二人の未来に幸多かれ…


エッジの効いたビートで、聴く者をグイグイとプッシュしてくる
楽曲のパワフルさとは裏腹に、音符のスキマから溢れ出すのは、
どこまでも前向きで、そしてどこまでも温かな、二人へ惜別の思い。
悲しいけれど、切ないけれど、がんばる二人の明日のために、涙を拭いて笑い合おう。
とてもそんな雰囲気の曲ではないのに、なぜか目頭を熱くさせる。
なんとも不思議な、節目の30枚目となるシングル。
そして、ボクには感じられるのである。
つんく♂がこの楽曲に密かに込めた、紺野あさ美小川麻琴への「もう一つの思い」を。


今さら強調するほどの事でもないが、最初にモーニング娘。から
巣立った福田明日香は、モーニングのみならず、芸能界そのものからその姿を消した。
卒業後、元のマネージャーであった和田薫との交流を続けながらも、
結局、自らは芸能の世界に、一度たりとも自分からは顔を出すことなく現在に至る。
それ以降の卒業メンバーたちは、今現在の事はともかく、どんな形であれ芸能界にとどまり、
特に中澤裕子以降の卒業メンバーは、全員がハロプロに身を置いている。
最近では、卒業=ハロプロ内でのソロ活動開始、というような趣きが強かっただけに、
目の届かない場所に旅立って行ってしまう今回の二人の卒業に、
ファンは大いに驚かされたし、その喪失感も相当大きいものがあった。


つんく♂も所詮は「会社」の人間であり、二人が芸能界を去るという事についても、
事前に話は知っていたであろうし、卒業する事そのものについては、
あるいは取り立てて特別な感情も抱いてはいないかも知れない。
だが、彼にとって、自分のテリトリーの外にメンバーを送り出す事が、
我々ファンと同様、久しぶりのことであるというのには間違いないし、
卒業しても、自らのそばに姿があって、あれこれアドヴァイスしてきていた、
最近の状況とは全く異なる今後に、一抹の寂しさを感じてたりしているのが、
つんく♂という人なのではないか、とボクは思うのである。
自分の手を離れ、全く別の世界へと進んでいく二人へ、
芸能界の先人として、そして彼女たちの青春そのものだった
モーニング娘。を取り仕切ったプロデューサーとして、彼が贈る事のできる最大のエール。
それは美辞麗句でも、作り物の激励でもなく、
彼と、彼女たちとをここまで繋ぎ続けた「歌」しかないのである。
もうこれから、なんのアドヴァイスもしてあげられないかも知れないけど、
歌と共に過ごしたモーニング娘。時代を忘れないでいて欲しい。
つんく♂が詞と曲に秘めたであろう、二人とのそんな固い絆。
だからこの楽曲は、聴く者の心に爽やかな感動を与えるのかも知れない。


背中には天使の羽。二人の飛び行く時まで今少し。


そして、見上げれば、未来。