222「感無量」



紺野&小川 涙のモー娘ラスト唱(デイリースポーツ)



何かしらの言葉を紡がねば、この場が成立しないということなど解っている。
だけど、どんなに巧みな文章表現を試みたとしても、
あの時間に、あの空間で体感した、あの充足感を、他人に伝える事など到底不可能だ。
と言うより、そこに居合わせた者たちだけが心の底から実感できた、
モーニング娘。のファンでいられて本当に良かった」という、
ささやかながらも、本当に大切にしたいと願う「幸せの形」を、
小手先だけの修飾語を沢山かぶせて、安っぽく語るなど愚の骨頂。
5月7日のさいたま夜公演に参加し、爽やかな感動に包まれた者の胸中には、
何かしらの、言葉にはできない思いが渦巻いているはずだし、
その思いをしっかり受け止め、あの日あそこに自分がいたという喜びを、
正直に実感できさえすれば、他には何もいらないとボクは思うのである。


感無量。
終演後、客電が灯った時に、ボクが呟いたまず第一声がそれだった。
感動で胸が一杯になるとか、必要以上に感傷的になるという訳でもなく、
ただ単純に、いい公演を見る事ができたという、
ファンという立場の者だけが味わえる、それは大所高所からの喜びであった。
本編の最後。万感の思いを胸にメンバーが唄ったのが『何にも言わずにI LOVE YOU』。
アルバムの中の一曲としてリリースされ、幾度となくステージでも唄われてきたが、
ボクはこの曲を聴く度に、いつも同じ事を思うのだ。


何にも言わずにこれからも 大切にしてね


心から愛してやまない彼女たちがそう願うのだから、ボクはその気持ちに応えたいし、
今まで彼女たちに与えてきてもらったさまざまな幸せの事を思えば、
そうせねばならぬ理由と義務が、少なくともボクにはある。
それは決して綺麗事などではなく、彼女たちと出逢い過ごしてきた日々の中で、
ごく自然に培われた、ファンとしての偽らざる本音の部分なのだ。
過去幾多訪れたクライシスの度に、大きな衝撃と絶望感に苛まれ続けてきたボクが、
それでも彼女らを追って行こうという気持ちになれているのも、
この曲の、このワンフレーズがあったからこそ。
だから、2人の卒業の発表があったツアーにおいて、
この曲が唄われるという事は、ボクにとって、とても大きな事であった。


LaLaLaのコーラスが会場全体に響き、やがてステージが大団円を迎えるとき、
言い方は悪いが、ボクにとってはいろいろな事が、どうでもよくなった。
何の理屈も理由もなく、ただひたすらに、ボクは満足していた。
このコンサートを見られて良かった。
この空間に居ることができて良かった。
嗚呼、感無量。と呟き、


そして、ボクはますますモーニング娘。の事が好きになった。