221「名曲再探訪。其の三。」



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金曜の夜から幾度となく。本当に幾度となく聴き続けている曲がある。


『好きな先輩』。


4年も前に出たのアルバムの中の、ごくありふれたトラックではあるが、
ボクの中で、この曲を越える「名作」は、この4年間一曲たりとも登場していない。
「いい曲だな」というような印象なら、
それこそ、これまでにリリースされた全ての曲に対して抱いているし、
その中でも特に秀逸だなと思わせるものも多くあった。
だが、そういった楽曲群の持つ魅力と、この『好きな先輩』の良さというものは、
形として似てはいるが、実は根本的に全く異質のものであるとボクは思う。
『好きな先輩』という曲は、その楽曲世界全てにおいて、
そのままモーニング娘。というグループを具現化した作品なのだ。


つまり、モーニング娘。とは「魂の継承」という要素が全ての生命線であり、
また、それを同時進行で我々ファンが確認できる事が、最大の醍醐味なのである。
彼女たちは、それまでの「一代アイドル」のように、
何もかもを短期間で消耗し尽くして、それで終わりという世界を生きているのではなく、
先人が立ち上げ、そして守り続けてきたモーニング娘。というブランドを、
選ばれた後継者たちが発展させ、さらに後世に引き継いでいく、
恐らく日本で最初で最後の「継承型」アイドルグループであり、
その継承劇に込められたドラマこそが、本当の意味での彼女たちの魅力なのである。
モーニング娘。の基本線とも言える、そういった継承のドラマにスポットを当て、
楽曲化されたのが、この『好きな先輩』である。
だが、ただ単純に、後輩が先輩に向けて送るメッセージソングという訳では決してない。
以前、入ったばかりの6期メンバーが、この楽曲を唄ったことがあった。
それが良くなかった、なんて事を言うつもりはこれっぽっちもない。
だが、この『好きな先輩』という曲は、ただ後輩のメンバーが唄ったから良いのか、
というような、即物的なものではないとボクは思ったりするのだ。


この曲がライブが初めて演じられた2002年の春ツアー。
なんというか、このステージが、この楽曲の全てを物語っているような気がしている。


「先輩」安倍なつみが『男友達』を唄う後ろで、ダンサーとして華を添え、
それが終われば、今度は「後輩」の5期メンバーの4人が先輩に届けとばかりに
『好きな先輩』を汗をほとばしらせながら演じる。
そして、「がんばります、先輩!」の絶叫が会場にこだました時、
モーニング娘。というグループの「形」を、はっきりと見て取る事ができる。
偉大な先輩の後ろで「陽の当たらない」日々を過ごす中、
それでも、精一杯ひたむきに努力し続ける5期の4人がこの曲を唄い、
一つの完成を見る事に、この楽曲の持つ意味は存在すると言っていい。
そして、モーニング娘。にとって、5期メンバーは唯一無二の存在なのだ
という事を、改めて実感させてくれる楽曲なのである。