203「I DOLL」



I DOLL―岡田唯ファーストソロ写真集amazon.com/購入もできます)



I DOOL。アイドル。私は人形。
一見、それは単純な言葉遊びのタイトルかも知れないが、
その奥底に、実はものすごく深い意味が隠されているようにボクは感じるのだ。


彼女たちがアイドルだというのは覆しようのない事実だとボクは思う。
いや、何もここでボクごときが力説などせずとも、
多くのファンたちも、きっとそう思っているに違いない。
当の本人たちも、自分たちはアイドルだと言ってるし、
世間だって、ハロプロと言えば、アイドルの女の子集団だと認識している。
だからこそ、彼女たちに関する様々なニュースや記事には「アイドル」の文字が躍るのだ。
そんなもの、当たり前の話じゃないかと誰しも思うだろう。
では「ハロプロ好きって事は、あなたはアイドルのファンという事ですか?」と問われた時、
「ええ、そうです」と、あなたは歯切れ良くそう切り返す事ができるだろうか。
無論、アイドル好きを公言するボクは、敢然と言い放つ事ができるが、
ハロプロのメンバーや、モーニング娘。が好きだとは言えても、
アイドルが好きですとは言い難い。そんなハロプロファンも案外多いのではなかろうか。
別に、その事自体をどうこう言うつもりはない。
要は、アイドル好きである事を隠したい、もしくは自分的に認めたくないと考える一方で、
ハロプロという集団に興味を抱き、ファンとなり、そして熱狂しているという、
ファンの精神構造のシンメトリーが存在しているという部分こそが、
ハロプロがここまでの支持を得るに至った、一つのポイントではないかとボクは考える。


全てが100点満点でなくとも、70点ほどの実力でも良いから、
とにかく幅広く様々な要素において動ける事が求められる。
それが、昔ながらのアイドルのスタイルだった。
歌や演技が稚拙であっても、パラエティで気の利いた事が言えなくても、
アイドルだからまあいいでしょう。そういうものだった。
そして、いろいろなキャリアの中から、自分にあった道を見つけて、100点満点のクオリティを目指す。
アイドルは「総合職」であるというボクの持論の根拠はそういうところにある。
だが、ハロプロは、70点の出来などほとんど世には出さない。
常に100点満点に近いレベルを維持し、高いクオリティのパフォーマンスを、
その誕生時からずっとボクたちに提供し続けてきた。
楽曲もアイドルポップとしては、考えられないくらいに高度なものばかりだが、
「アイドルらしからぬ」表現力を駆使し、常に高い完成度で仕上がってくる。
そういう姿勢が、従来のアイドルに存在していた、ある種の「甘ったるさ」を消し去り、
今までアイドルには見向きもしなかった層までをも振り向かせた。
そんな「アイドルらしからぬ」存在に惹かれた者たちが、
長髪脂デブのキモヲタと同列のアイドルファンとして扱われる事への戸惑いやジレンマ。
生じた迷いが、ファンとしての熱を冷ましていくというパターンも少なくない。
この『IDOLL』というタイトルに込められているのは、
ハロプロがアイドル集団だという事の再確認。そして、例えアイドルであろうがなかろうが、
興味を持ったが何かの縁。正々堂々、誰に恥じることなく私たちを可愛がってくださいという、
彼女たちからの「切なる願い」なのではないかとボクは感じている。
そして、そのメッセンジャーとなったのが岡田唯、という訳である。


それにしても、まさか、彼女の事を単独でコラムに取り上げる日が来ようとは夢にも思わなかった。
健康的なセクシーを積極的にセールスポイントとした存在は、もちろんハロプロ史上初。
それだけに、どう転がっていくのかは、期待半分不安半分。
ただ、一つだけ言えるのは、決して彼女のとりえはプロポーションだけではないという事。
そのふくよかなボディばかりに目を奪われていると、
うっかり彼女のもっと大事な魅力を見落としてしまうかも知れない。