194「まるごと『レインボー7』/Part3」



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#5 『INDIGO BLUE LOVE』


ひょっとすると、ボクたちはモーニング娘。という
グループに対して、大いなる思い違いをしていたのかも知れない。


伝説のメガヒットになった『LOVEマシーン』がリリースされた1999年。
それ以前とそれ以降のモーニング娘。は全く違うグループだ、などと、巷ではよく言われたりする。
確かに、メンバーのキャラクターや楽曲面の変化を考えてみる時、
ベタなアイドルグループ然としながらも、歌唱力やコーラスワークなどで、
アーティスティックなテイストをしっかりとアピールしていた「ラブマ以前」のモーニングと、
「歌を聞かせる」という部分だけではなく、ダンスや衣装などのビジュアル面も含めた、
いわゆるエンターテインメントの一環としての楽曲表現に特化していった「ラブマ以降」のモーニングは、
単純視点で見れば、全く違う次元のグループだと言っても過言ではないと思うし、
その変化を良しとするのか否かが、モーニング娘。というグループの支持不支持を隔てる、
一つの分水嶺になり、それによって多くのファンが「間引かれた」のも事実である。
そして、飯田圭織がグループを去り、オリジナルメンバーが皆無となったモーニング娘を見て、
名実ともに、ラブマ以前モーニング娘。とは全くの別物になってしまった…
と、誰しもがそんな思いを抱いたに違いない。
しかし、それは、彼女たちが仕掛けた巧妙かつ大胆なギミックだった。
彼女たちは、ボクたちの見えない部分で、ラブマ以前のモーニング娘。が持っていた、
アーティスティックな部分を、実は連綿と継承し続けてきたのである。
平たく言えば、モーニング娘。は、結成時から現在に至るまで、
「聞かせる歌を唄える」グループであり続けてきたのだ。


ボクがそう考える理由。
それはもちろん、この『INDIGO BLUE LOVE』を聴いたからである。


ボーカルを取った3人のうち、新垣里沙の成長ぶりというものは、
昨年の春ツアーにおいて大いに実感させられたところだし、
その感動についてはこのコラムでも取り上げたほどだ。
今回、この曲を聴いて強く感じたのは、もちろんガキさんのさらなる進歩もあるが、
それに加えて6期の二人、亀井絵里田中れいなの、その表現力の著しい成長だった。
切れ味ではなく、ウエットな質感の歌唱が求められるこの楽曲。
ごまかしが効かず、ある意味で歌い手の真の実力が試される、少々歯ごたえのある曲だが、
亀井も田中も、見事にその難題をクリアした。いや、クリアしたというより、
つんく♂の提示したお手本を、自らの手の内にしっかりと入れ、
そして、現時点で持つありったけの表現力を駆使し、素晴らしい完成形を見たのである。
それは『シャボン玉』や『恋ING』の時からは比べ物にならないほどのテクニックであり、
数年の間、二人が密かに積み上げてきた努力の確かな結実と言えるだろう。
こういう事を言うのは憚られるが、それでもあえて言うと、
現体制のモーニング娘。は、他のどの時代のグループよりも、
歌唱力に満ちているのではないかとボクは強く感じているのだ。
藤本・高橋という確固たる主軸がいて、そこ前述の3人が加わり5本柱を形成。
脇を固める吉澤・小川の実力は折り紙つきで、紺野も未だ歌唱面の成長を続けている。
だからこそ、この曲で3人が「本物」になった事が、
すなわちモーニング娘。が唄える事の証明だと言い切れるのである。
そういった、シンガーとしてのモーニング娘。の実力を見せつけるという部分においても、
今回のアルバムはとても意味ある一枚だと言えるだろう。
だが、歌を聞かせるグループとしての色を濃くしたからと言って、
エンタメ集団としてのモーニング娘。の影が薄まるという事はもちろんありえない。


次のトラックの再生が始まった瞬間。
ボクたちはその事をイヤという程、思い知らされる事になる。