169「『プッチベスト6 DVD』」



プッチベスト6 DVDamazon.com/購入もできます)



「マワリスト」と「オドリスト」。現在のハロー界隈のコンサートの客席は、
そのどちらか一方、あるいは両方の属性を持つファンがその多くを占めていると言っても過言ではないだろう。
読んで字の如く。マワリストとはヲタ芸を使う人種であり、
オドリストとはステージ上の演者の動きを完全コピーする人種の事。
どちらも「キモさ」の度合いで言えば全く大差はないのだが、
流れとは全く無関係な上、あまり見た目がよろしくないもので、
あらゆる場面で忌み嫌われるマワリストに対し、
一応はテーマづけられた動きで、しっかり決まっていればそれなりに見映えの良いオドリストは、
比較的(ここ強調)、好意を持って受け入れられているような気がする。
ちなみにボキは、曲や場の雰囲気や、いれば連番相手などによって、
マワリ、オドリ、そして「何もしない」を使い分け、ヲタ生活をエンジョイしている。
そんな自分も当事者であるからこそ言えるのだが、
ヲタ芸にしても振りコピにしても、中途半端なものほど情けないものはない。
マワリスト的に言えば、動きにキレがないいわゆるショボ芸。
オドリストで言えば、ミラー(手の動きなどの所作が左右逆になる事。そうなる理由は後述)だったり、
決めるところが決められなかったり…といった具合。
だから、そんな風にならないために、マワリストもオドリストも、個々である程度の練習をする。
「え、練習なんてするの?」と驚く人もいるかもしれないが、
会場やその周辺で繰り広げられるヲタ芸や振りコピは、つまりは個々の修練の積み重ねの成果であり、
ただ単にキモい動きを、のんべんだらりと繰り出しているだけではないのである。


とは言え、ヲタ芸の方は基本の動きさえ覚われば、後はバリエーションの世界。
よって、OAD・マワリ・ロマンス・ロミオ・PPPHの
ヲタ芸基本5動作」の精度を高める事に執心すればいいだけなのだが、
振りコピの方はそういう訳にはいかない。
当たり前の話だが、演者と全く同じ動きを実現する為には、
まず演者の動きを正確に追う事が必要になってくる。その演者たちはと言えば、
振付のセンセイについて、細かい動きもしっかりと確認しながら身体に入れていく事ができるが、
演者たちが見せる「完成形」しかお手本にできないオドリストは、
必然的に歌番組での姿などを参考にする事になる。
ところが、カット割りやカメラワークが邪魔をして、
動きの細かい部分までをフォローする事ができないというパターンがほとんどなのだ。
また、グループの場合、全員の動きを真似るという事はほとんどなく、
たいていはお目当てのメンバーに絞ってコピーをするが、これも細かいカット割りによって、
唄っているパート以外は、お目当てがほとんど映らないという状況がしばしば起こる。
仮にそれが歌パートのもらえなかったメンバーだったりしたら、これはもう悲惨である。
だから、動きがしっかりと追えるよう、歌番組の録画はなるたけ多くの種類を用意し、
様々な角度から吟味できるようにするのと同時に、コンサートになるべく参加して、
振付を、頭と身体に徹底的に叩き込もうとする。そして、画面にしろステージにしろ、
演者と対面で接する以上、左右の動きが真逆になるという部分もちゃんと考慮した上で
振りコピに臨まねばならないのである。オドリストのスキル向上へのプロセスはとても涙ぐましいのだ。
あるいは、常人には理解できない世界でもあろうかと思う。
しかし、演者と共に踊る快感。そして、難解な振りをビシっと決めた時の達成感は何物にも変え難く、
それを味わいたいが為に、誰に理解されずとも、オドリストたちは
ただ一心不乱に修練に勤しむのである。
そんな健気なオドリストたちに、最近現れ始めた強い味方。
それが「ダンスショットバージョン」と銘打たれたPV映像である。
今回リリースされたの『プッチベスト6 DVD』では『ALL FOR ONE&ONE FOR ALL』と
今夏のシャッフルユニット3曲がダンスショットバージョンとして収録されているし、
先にリリースされたモーニング娘。の『色っぽい じれったい』のシングルVにも収められていた。
振り付けをつぶさに観察するのには、まさにうってつけの映像を、
それまで流通していた「裏モノ」ではなく、正真正銘の事務所公認として見る事ができるのだから、
オドリストとしては、まさに待望の流れと言えるだろう。
需要はあれど、なかなか商品化されなかったジャンルが解禁になった事で、
あるいは今後、オドリストたちの地位もぐっと向上していくかも知れない。


考えてみれば、ピンクレディーの振り付けができるオバチャンたち。
セーラー服を脱がさないで』を恥ずかしくも振り付きで唄える30代の男性。
そして、アムラーと呼ばれカラオケで難しい歌を練習しまくった元コギャル世代。
神代の昔からアイドル歌手というのは、振り付けや唄い方や佇まいを
真似される事が一つのステータスであった。
「どうぞマネをしてください」というこの流れが、
もしかすると、また新たなハロプロ人気を生み出す起爆剤になるかも知れない。