160「久住小春、半年。」



久住小春Wikipedia



新メンバーとしてメディアにお披露目されたのが5月1日。
母校での合格発表の収録から、ハロモニのオンエアまでに
少しばかりのタイムラグがあった事を考慮したとしても、
5月6日に日本武道館のステージに立ち、1万人の観客を前にして、
高らかに自己紹介、そして堂々たる態度でメンバーとの掛け合いを披露したというのは、
今から考えればやっぱり物凄い事である。
彼女自身も自らの代名詞として好んで用いたりして、今や少し軽めの響きに聞こえる
「ミラクル」という言葉だが、「奇跡」と書けば、その響きはグンと重みを増す。
数多の少女の中から、久住小春という素材が発掘された事。
その素材が、稀に見る「芸能人適性」の持ち主だった事。
そして、その適性をあるがままに開花させ、キャリアを超えた輝きを放っている事。
一連の流れは、まさに「奇跡」がなせるシンデレラ・ストーリーであり、
そんな劇的な人生が、まるであっけらかんと普通に起こってしまうというのもまた、
彼女が巻き起こす「奇跡」であると言えるだろう。


今、改めてオーディションで合格した瞬間を再生してみた時、
それはつい半年前の映像なのに、そこに映っているのが同じ人間とは思えぬほど、
彼女自身が凄まじい変貌を遂げた事を実感する。
ジャージにヘルメットの自転車通学。科学の授業で隣のクラスメイトとなにやら話す姿。
そして、体育館のステージでモーニングのメンバーと邂逅した瞬間の、怯えたような表情。
どこにでもいる田舎の中学1年生。そんな佇まいがそこにはあった。
いや、確かに他のクラスメイトなどと比べれば、放つモノの大きさは相当に違う。
しかし、それとて「校内のアイドル」というような趣きのそれであって、
少なくとも日本武道館で1万人の観客を魅了するようなオーラがあった訳ではない。
たった半年という時間が、久住小春を「校内のアイドル」から「日本のアイドル」に変身させる。
それもやはり「奇跡」の仕業というより他ない。


なにせ、ミラクルエースという宿命を持って産み落とされ、
モーニング娘。にとっての救世主である事が、初めから運命付けられているのだから、
彼女に寄せられる期待は計り知れないほど大きなものであると言える。
しかも、時間が経つにつれ、今のように勢いだけで何事も通用しなくなるという事実を
イヤでも実感する日がこれから訪れる事になる。
ある意味、そこからが本当の久住小春のスタートなのであり、
自らの努力とテクニックで厳しい芸能界を生き抜いて行かねばならない日々の中、
それでも久住小春は、今の久住小春のまま、事も無げに「ミラクル」を連発してくれるのではないか、
とボキはまだ見ぬ未来を勝手に想像し、一人ワクワクしている。
そういう意味で、彼女の起こす「奇跡」は、まだその序章の部分に過ぎないのかも知れない。


まあ、なんと言っても、「奇跡」のカタマリのような人が、彼女をしっかり教育しとる訳ですから。