153「名曲再探訪。其の二。」



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今更ながら『さくら満開』なのである。


ボキなどが言うまでもなく、一昨年のおとめとさくらの分割発表から、2枚のシングルのリリース。
そしてコンサートツアーに至るまでの一連の流れは、まさに至福の期間だった。


今から思えば、その前評判は決して芳しいものではなかったモーニング娘。の分割。
突然降って沸いたような企画の意図が今ひとつ理解できなかったし、
分割の発表から実際のスタートまでに時間があった事も手伝って、
「どんな感じになるのだろう」というワクワク感もあるにはあったが、
さほどの結果は誰も期待はしていなかったのではないかと思う。
ただ、目を見張ったのは、そのツアースケジュール。
主に地方都市の会館公民館クラスの会場を、本体の半分の人数で回り、
しかも、さくらおとめが同日に、全く離れた場所でコンサートを行うという、
例え持て余し気味であったとしても、SSAや大阪城ホールで興行を打つという「既成事実」に
拘っていた感の否めない当時のお家事情からすれば、極めて「実験的」な興行形態だったが、
本体のコンサートになんとも言えない閉塞感を抱いていた我々ファンからすれば、
むしろそれは待望のものだった。
同じ日に違う場所で行われるコンサートの、どちらを見に行くか。
推しメンありきで、どちらか一つを徹底的に追う者。
地元チョイスや、その時々の気分で見に行くコンサートを変えるフラット派、
あるいは、土日でさくらとおとめの両方を楽しもうとする猛者もいた事だろう。
そして会場に行けば、待っているのは、狭い会場ならではの密着感や一体感。
分割コンは、飽和状態となっていたコンサートの楽しみ方の幅を確実に広げたし、
「それ相応」の会場設定や、コンサートの内容の変革など、
今のモーニング娘。の活動の一つの大きな根拠となっているのは間違いないだろう。


当然と言えば当然だが、道重さゆみがいるというだけで、
当時のボキのメインフィールドはやっぱりおとめ組だった。まあその事自体はなんてことはない。
だが、もうちょっとさくら組の方もつぶさに見とくべきだった…という後悔は、
活動に一区切りついてから1年以上経った今でも大きく心に残っている。
なぜなら、さくら組が出した2曲
『晴れ 雨 のち スキ』そして『さくら満開』が、あまりに素晴らしい楽曲だからである。
結局、当時のボキはただ単純に、おとめ組さくら組を、横の比較で見てしまっていた為に、
そのコントラストの差ばかりに目が向いてしまって、物事の本質を見抜けなかったのだろう。
はっきり言って、さくら組のリリースしたこの2曲は、
ハロプロ史に残る名曲であると高らかに言い切ってしまっていいと思う。
特に、安倍なつみが去り「さくら組はどうなるのか」
などと言われる中リリースされた『さくら満開』である。
底が見えないほど深くて広い楽曲の奥行き。徹底した和のテイスト。
そして、曲の中に流れる空気の全ては「女の子感」に満ち満ちていて、
曲の流れているその数分間だけは、聴く者見る者を、濃密で甘い香りに包まれた
魅惑の世界へと誘うかのような雰囲気をこの楽曲は持っている。
また、ステージに目をやれば、はらはらと扇子をはためかせ、
まるで竜宮城で舞い踊る乙姫を彷彿とさせる幻想的な佇まいがそこには存在していた。
確かにDVDで追体験はできよう。しかし、あのさくらコンでの
圧倒的なパフォーマンスの全貌を感ずる事は、今となってはどうやっても叶わない事が悔しい。
そして同時に、そんな甘美な時間を少なくとも3度体感する事ができた事をボキは幸せに思うし、
その時の事を思えば思うほど、ますます『さくら満開』への思いは募っていく。


分割コンの復活。
曲を聴くたび、見たくなるのはいつもその夢なのだ。