149「『好きすぎて バカみたい』〜DEF.DIVAデビューシングル」



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聞けばハロプロ楽曲がチャートの1位を獲得したのは、
2003年5月のモーニング娘。のシングル『AS FOR ONE DAY』以来なんだそうである。


強力な同発のない、言わば「エアポケット」的なリリース日を選び、
それが見事なまでにズッポリ嵌まった…という部分は否めないし、
この1位が、ラブマ当時の「売れる」ハロプロ復権への確かな兆しであるとかないとか、
正直、さすがにそこまでの考えには及ぶものではないが、
少なくとも、チャートの1位を獲得することができるだけのポテンシャルが、
今のハロプロにもまだ残されているのだという事を内外に知らしめたという意味では、
今回のDEF.DIVAのチャート首位獲得は快挙であると言えるだろうし、
ごまっとう”、そして“後浦なつみ”と流れてきた、
一連のスペシャルユニットの、ある意味においての集大成的な作品として、
この『好きすぎて バカみたい』はとても意義深い1曲となった。


楽曲的には【80年代ディスコチューン+つんく♂流ブラコン】というテイスト。
そこに、これまたつんく♂先生お得意の、
「強がり系都会少女の危うい恋愛模様」(余談だが、このタイプの歌詞世界には、
どうしても後藤真希のイメージをダブらせてしまうのだけど、それってボキだけなんだろうか)
的なシチュエーションの歌詞をくっつけて、ちょっとアイドルポップスのエッセンスも入れてます…
という、まあ、つんく♂プロデュース作品としては、極めてオーソドックスな仕上がり。
昨年の『恋愛戦隊シツレンジャー』のような、奇をてらった趣というものは感じられず、
悪い言い方をすれば、メリハリのあまりない楽曲という捉え方もできる。
だが、逆にそういう部分が、何度聴いても飽きのこない、耳障りの良さを醸し出しているのは間違いなく、
音楽的にあえて冒険せず、直球勝負で「勝ちにきた」楽曲といったところなのだろうか。
結果それが当たり、好成績を叩き出したのだから、作り手側としては「してやったり」の心境だろう。


さらにその他の成功要因というものを模索してみるとき、
やはり、石川梨華の存在というものを避けて考える事は出来ないだろうと思う。


彼女が直接的にユニットに何かをもたらしたという部分は、率直なところあまり感じられない。
昨年のメンバーに彼女が加わり、歌に大きな化学変化が生じたかと言えば、
多少ユニゾンの声に、カラーが加わったと感じる程度だし、
懸案の歌唱力の部分にしても、違和感を持つほどに彼女の歌声が、
「隊列を乱している」という感じはしなかったので、
楽曲面においては、殊更に石川梨華が加わったからどうこうという要素はほとんどないのではなかろうか。


ボキの考えるキーポイントは、彼女の「柔軟性」である。


過去様々なユニットに登板した経験。そしてその中で、集団の中で自らがどうあるべきなのか。
キャラクターの「押し引き」というものを彼女は確実に自分のものとしている。
後浦なつみ”の3人は、石川ほどは多くのユニットを経験してはおらず、また、
他人を引き立てる事をあまり必要としないポジションに長い間立っているが故、
ユニットを組んだときには、どうしても「個」が勝ってしまい、
集団性に乏しくなってしまう部分が少なからずあった。要はユニット向けではない3人なのだ。
しかし、その中にユニット慣れしている石川が入ることで、
後浦なつみ”の突き刺すような個性のぶつかり合いはかなり緩衝され、
同時に、ユニットに入ったときの「ベストな立ち位置」を心得ている石川が、
3人の個性を引き立てつつ、自らも輝きを放てるポジションに君臨した事で、
DEF.DIVAは、実にバランスの良いユニットとなったのである。


スペシャルユニットは、たった1曲だからこそ大いなる価値がある。
なんていう理屈は頭では解っていても、
「もう一曲」の欲望が拭いきれないのが人情。


「このまま終るなんてもったいない」
そんな思いはたぶん“後浦なつみ”の時にはなかったことである。