148「『スイートルームナンバー1』〜美勇伝1stアルバム」



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美勇伝に関しては、これまでここでも何度か取り上げてきて、
その都度いろいろ見聞きしていく中で、
「そろそろユニットのカラーが固まりつつあるのかな」と、
朧げながらそう感じていた部分があった。


デビューシングル『恋のヌケガラ』(TR-5)の、和テイストのノーブルな雰囲気から、
作品を経るごとに、セクシー、あるいはもっと直接的な「エロティシズム」といった色が混ざり合っていき、
美勇伝というユニットは、日に日に大人びた雰囲気を醸し出すようになる。
そして、すっかり「オトナ」な佇まいと雰囲気が板についた現在の姿を見ながら、
ボキとしては、そこがとりあえずの美勇伝の完成形なのだろうな…などと勝手に考えていて、
待望の1stアルバム『スイートルームナンバー1』も、
おそらくはその路線をしっかりと踏まえた形の、アダルトチックな仕上がりになるのではないかと、
ボキなりに、アルバムの方向性のようなものをある程度イメージしていた。


ところが、蓋を開けてみてビックリ。
なんとそこに展開されていたのは、ボキの全く想定外の世界であった。


シンセがキュンキュン唸る80年代テイスト(TR-3,6)あり、
ミドルテンポの正統派(TR-8)あり、遊び心アリアリのロックチューン(TR-10)あり、
そして、歌声がすぐそばに感じられるバラードあり(TR-11,12)と、
新録の6曲は、どの曲もまさに「コテコテ」のアイドルポップスそのもの。
聞き比べてみれば歴然だが、シングル曲のどれもが、
アイドルユニットとしては少し「重め」の雰囲気なのに対して、
アルバム用に新たにテイクされた楽曲は、
まさにポップスという感じの、フワフワ感に満ち溢れている。
まず、その意外な楽曲チョイスに驚かされたのが一つ。
そして、デビューからミディアムな感じの雰囲気や歌唱法を貫き、
それがユニットそのもののカラーになりつつあった美勇伝が、
その対極に位置する特有のポップ感というものを、
無理なくソツなく見事なまでに表現しきっていた事にも、大いに驚かされた。


ポップとミディアム。まったく異なる2つのテイストが同居しながら、
内容的に全く破綻していないばかりか、その両者のコントラストが、
作品全体における絶妙の「流れ」を形成しているというマーベラス
それはひとえに、美勇伝というユニットの類まれなパーソナリティの賜物であると言えるだろう。


幅の広い表現力のなせる技か、あるいは奥の深いポテンシャルが放つパワーなのか。
いずれにせよはっきりとしているのは、
美勇伝というユニットに、明確な完成形などまず存在しないという事。
変幻自在のユニットカラー、そして、そこから醸し出される甘酸っぱい魅惑を思う存分体感できる、
『スイートルームナンバー1』は、まさに「禁断の一枚」である。