145「一寸の虫にも五期の魂〜終章・5期メンバーの「帰還」」



モーニング娘。Wikipedia



もはや今のモーニング娘。には欠かせない、小川麻琴「おとぼけ」の一幕の後、
彼女はすぐに凛々しく表情を変え、そして暗くなった客席に語りかけるように科白を呟く。
その後ろ。暗転のステージでは、高橋愛紺野あさ美、そして新垣里沙の3人が、
息を殺してAメロの入りを待ち構えている。
『初めてのロックコンサート』がコンサートで披露されるのは、
2002年のツアー"LOVE IS ALIVE!"以来の事だ。
考えてみれば、2002年という年は、
2年間という長い長い沈黙を経ての、オリジナルアルバム『4th いきまっしょい!』のリリースがあり、
後にハローマゲドンと呼ばれる事になるハロー!プロジェクトの大改編があり、
そこで発表された後藤真希の卒業があり、そして6期メンバー募集開始があり…と、
演者ヲタの区別無く、ハローを取り巻く者たちにとって最もタフさが要求された時代で、
そして、そんな時代の流れの中、「いち早く戦力に」という猛烈なプレッシャーを与えられ、
なかなか見えない結果に苦悩しながらも、ひたむきさを忘れなかったのが当時の5期メンバーだった。


他の5期メンバーのヲタにはいささか気の悪い話かも知れないが、
小川がリードを取り、他の3人が華を添える、今回の『初ロック』の形こそが、
5期メンバーの原点なのではないかと、ボキはステージを見ながらずっと思っていた。
その根拠としてフィードバックさせた映像は、もちろん彼女らを生んだ
モーニング娘。LOVEオーディション21』のダンスレッスン風景である。
そのセンター役を任され、悔し涙に暮れながらもその大役を全うした小川麻琴
そして「その他大勢」のフォーメーションの中でも、しっかりと魅力を放っていた3人。
それこそが多分、5期メンバーの最もベーシックな形なのであり、
さまざまな要因が重なって、その形を切り崩さねばならなかった事こそが、
5期メンバー不遇の最も大きな要因だったのではないかと、ボキは改めてそう感じるのである。


加入してからの4年間、メンバー自身の大きな成長はもちろんあったが、
状況に応じて目まぐるしく立ち位置が変化してきたという事も非常に大きかった。
マコトがあそこまで「ボケ役」に徹する存在になったり、
少女のあどけなさを最も色濃く残していた当時のガキさんからは、
ノーブルにバラードナンバーを歌い上げられる今現在など全くイメージできなかった。
タカハシとこんこんにしても、今の形のような「キャラ立ち」が、片鱗で多少は予想はできても、
ここまでの大きな変貌になるとは思ってもみなかった。
もちろんそれは、メンバーとして生き残るための「必要に迫られた」変化であったし、
その影響で、個々のスキルやキャラクターは確かに大きく育ったと言える。
しかし、本来彼女らが持っているベストな形からはどんどん離れたものになってしまっていったのは事実で、
「確固たる形」を久しく形成しないまま、時間だけがいたずらに過ぎていき、
5期メンバーは失速を余儀なくされてしまったのである。
それからいろいろな曲折を経て、そして今回ついに、2005年のツアーに再び
「あの頃の5期メンバー」として彼女たちは集った。
当然の如く4人は、まるで水を得た魚のように、活き活きと個々の持つ実力と魅力を惜しみなく発揮し、
見る者の視線をこれでもかと釘付けにしている。


小川麻琴が、高橋愛が、紺野あさ美が、新垣里沙が、
4年目にしてようやく戻った「自分たちの場所」。
そして、そこに放たれた輝きは、過去最も小粒と揶揄された追加メンバーの、
まさに「魂」のなせる技。


そして5期メンバーは、不屈の実力者として、
これからもモーニング娘。の屋台骨を支え続けていくのである。