143「一寸の虫にも五期の魂〜紺野あさ美の「和癒」」



紺野あさ美Wikipedia



モーニング娘。に渦巻いていた過剰なまでの「殺伐感」が薄らいで久しい。


まあ今でも、新メンバーのオーディションともなると、
夏まゆみが相変わらずの「鬼軍曹っぷり」っを遺憾なく発揮しているし、
どう見ても精一杯頑張っている久住小春を、それでもあえて厳しく躾る吉澤ひとみ
カメラがあざとく狙っていたりと、その名残りは現在も多少だが見られる部分もある。
だが、「試練」や「大問題発生」などと称された、かつてのあのサディスティックなまでの
精神的肉体的プレッシャー、そしてそこから派生する特有の殺伐とした雰囲気は
すっかりと影を潜めてしまった感がある。無論、ボキはそれで全然いいと思っている。
それはまだ、モーニングがテレビの企画に頼らないとプロモーションできなかった時代。
つまりモーニング娘。というビジネスモデルが確立されていなかった時代だったからこそ必要だった、
それはある種の「捨て身」であり、もはや今の彼女らには、捨て身も殺伐も必要はないと考えるからだ。
もちろん、グループ内外を問わず他人と切磋琢磨する心は必要だし、
それさえ失ってしまう事は、タレントとして大きなマイナスである事には違いないが、
不必要にメンバーを追い込むような刺激をファンが求めたり、
その光景を見て喜ぶという時代はすでに週末を迎えているとボキは思っている。
彼女らは、もうかつてのような、イジられてなんぼの三文役者ではなくなったのだという事を、
モーニング娘。を取り巻く全ての者はもっともっと理解せねばならない。
そう。時代は流れ続けているのだ。
とは言え、刺激や殺伐がなくなってしまった事を憂う声はやっぱり多かったりもする訳だが、
そんなものって本当に必要なんだろうかとボキなんかは思ってしまう。


今のモーニングがいかに「死に体」であるかを論ずるのに、
バブル花盛りだった『LOVEマシーン』の頃の栄華をいまだに引き合いに出すのと同じで、
モーニング娘。を巡る環境が時時刻刻と変化していくいう当たり前の現実を良しとせず、
各人が持つ「理想のグループ像」と実像との間にギャップが生じた途端、
やれ終わりだ死に体だと、喧く終末論を唱えるヲタのなんと多い事か。
別に殺伐なんか無くとも、仲良しグループになったとしても、
グループの持っている本質的なポテンシャルは、終始一貫、何も変わってなどいないのだ。
そしてその事は、日々正念を据えてモーヲタをやっていれば、苦もなく理解できる。
その本質に気がつかないのは、刺激や殺伐といった「棘」の部分でしか
モーニング娘。に楽しさを見出せない、いわば不器用なヲタたちばかりで、
その数が日に日に多くなっている事を、実に嘆かわしく思ってしまう。


そんな不器用なヲタに、一つヒントを与えるとするならば、
それは、紺野あさ美の存在である。


年長が強力なリーダーシップでグループを引っ張るのではなく、
歳の近い先輩と後輩が、互いを見つめ合い、そして高め合っていく、
言わば「部活的」なのが今のモーニング娘。だとして、
そのような部活的な人間関係の中に必要なファクターが「殺伐」ではないという事は、
おそらく誰しも簡単に想像はつくだろう。
必要なのは、グループ内の結束、そしてチームプレイを自然な形で生み出せる和合の精神。
そして、周囲全てに安心感を与える、優しいキャラクター。
それを持ちえる存在と言えば、今のモーニング娘。には一人しかいない。
そう。今やグループの「和癒」の象徴である紺野あさ美は、
多くのヲタが足りないと感じている、殺伐というキーワードからは対極の位置に存在する、
まさに和み、そして癒しそのものなのである。


それと同時に彼女は、モーニング娘。の「努力」の象徴的存在でもあるのだ。
今さらここに記すべき事でもないのかも知れないが、
彼女ほどモーニング娘。に加入してから努力し続けてきたメンバーは他に存在しない。
そう言うとまた語弊もあろうが、なにせ彼女は「赤点」と言われ、
同期の3人よりも、他の期の追加メンバーたちよりも、さらに言うとオリジナルメンバーたちよりも、
ずっとずっと後ろのスタートラインから走り始めたという過去がある。
当然そこには、人よりも倍の努力があり、そしてその努力から、彼女は多くのスキルを獲得した。
部活的モーニング娘。にとって、ムードメーカーであり、そして他のメンバーのやる気を点火させる、
「努力の鬼」でもある紺野あさ美は、まさにモーニング娘。になくてはならぬ存在であり、
彼女の存在こそが、今のモーニング娘。を大きく支えていると言っても過言ではないのである。


ハロモニ中、食べ物のVTRのワイプの中で、
とろけそうな表情をしながら「やばーい」と呟く紺野あさ美を目の当たりにして、
それでもアナタは「殺伐こそ全て」なんて言えますか。


はっきり言います。ボキには、無理です。