120「『気がつけば あなた』〜松浦亜弥17thシングル」



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で、その里帰りコンサートで初披露されたのが、
松浦亜弥17作目となるニューシングル『気がつけば あなた』である。


午後の紅茶」のCMにおいて、もうずいぶんと前から何度も何度もリピートされている
サビのメロディと歌詞が、いい感じで耳に馴染んできているという人もさぞ多かろう。
しかし、実際我々がCMで耳にしてきた曲と、今回シングルとして発表されたものが
全く毛色の違うテイストで、正直ちょっと驚いた部分があった。
ちなみにCM版のアレンジを担当したのは、名曲『赤いフリージア』等を手がけた湯浅公一
そしてシングル版の方は、毎度おなじみ、鈴木 新党Daichi 秀行大先生によるものである。
まあ誰がどうという事ではなく、いい楽曲である事に変わりはないのだけれど、
あまりに抱いた印象の落差が大きかった分、少し違和感を抱いてしまうというのも偽らざる心境である。
まあ文句ばかり言っていても建設的はないので、
シングル版『気がつけば あなた』の魅力について今日はじっくりと掘り下げてみる事にしたい。


松浦亜弥という歌い手ほど「青春群像」の似合う者はいない。


もちろん甘甘で、こってりとした恋愛シチュエーションをやらせても、
少し大人びたミディアムな世界を表現させても、
見事なまでに完璧に演じきってみせる柔軟性と幅の厚い実力は
誰しもが前々から認めるところではあるが、松浦亜弥の白眉と言えばなんと言っても
「学生時代の麗しき青春の日々」を表現する際のとてつもないリアル感。
もっと解りやすく言えば、セーラー服やスクールブレザーが、
日本一違和感なく似合う19歳だということである。


解りやすいテキストとなるのは、彼女の1stアルバム『ファーストKISS』。
これを聴けば、ボキがこだわる「青春群像の似合う松浦亜弥」を、イヤというほどに堪能できる。


例えば『絶対解ける問題 X=○』では、
「テスト中」という学生ならではのシチュエーションにおける乙女の機微をテンポ良く歌い、
『笑顔に涙〜THANK YOU! DEAR』では、
卒業で仲間と離れ離れになる切なさを、それでも屈託なく明るく表現した。
彼女の曲を聴きながら目を閉じると、学生服姿の松浦亜弥が、付き合い始めたばかりの彼氏と、
あるいは数年間を同じ教室で過ごした仲間たちと笑顔でじゃれ合う姿が
何の苦もなく容易に想像でき、同時に、自らにも存在したそんな甘酸っぱい季節の記憶が脳裏に蘇る。
そして己の記憶と松浦亜弥の幻影とが混沌と混ざり合い、
気がつけば、学生時代傍らに彼女がずっといて、楽しい日々を彼女と共有していたかのような、
そんな、なんとも言えぬ「幸せな錯覚」を味あわせてくれるのである。


多少の誇大妄想はこの際勘弁願うとしても、彼女に「青春の光と影」をやらせたら
右に出る者はいないという事だけは、なんとなく共感してもらえることだろうと思う。
で、シングルヴァージョンの『気がつけば あなた』は、
そんな彼女にぴったりの爽やかなギターアレンジが印象的なチューン。
確かに、サビだけの付き合いだったCM版にも素晴らしい出来映えの一端は感じられたものの、
イントロからアウトロの最後の1秒まで繰り広げられる、
松浦亜弥お得意の青春劇場を、的確なアレンジでたっぷり楽しませてくれるシングル版には、
あるいはどうやっても敵わないのかも知れない。


イメージ+ビジュアル+楽曲。
三位一体の妙が生み出す松浦亜弥の世界。
今まで手が出なかった人も、このシングルを契機にドップリ浸かってみるのはいかがだろう。
きっと、何かが変わっていくはずである。


それが何かは、ボキにも解らないけれど。