114「モーニング。チャンネル デジフォトヒストリー」



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モーニング娘。というグループは、
メンバーの加入や卒業、はたまたリーダーが交代するなどといった
「ターニングポイント」を境い目にして、メンバーの心持ちよう。
そして、それに伴うグループとしてのカラーがめまぐるしく変化してきた。


中澤裕子という「鬼軍曹」がリーダーとして君臨していた時代は、
和気藹々の中にあっても、メンバーたちは、互いをそれぞれライバル視し、
グループにどこか一本、張り詰めた糸のようなものが存在していたように思える。
それは、中澤を初めとしたオリジナルメンバー、そして2期メンバーと
「辛い時代」を経験している者が、甘苦含めてその頃に培った様々な精神論を、
後藤や4期メンバーなどの後進たちに脈々と受け継いでいった証であり、
そしてそれらの、先輩メンバーたちが自ら血を流して獲得してきた、
言ってみれば「生きた」精神論のリアリティは、芸能界のなんたるかが理解できぬまま
スターダムをのし上がろうとしていたニュースターたちに多大な影響を与えた事は、
後藤や他の4期メンバーの確かな成長の跡を見れば一目瞭然であろう。


しかし中澤裕子が卒業し、リーダーが飯田圭織となってから、
モーニング娘。はガラリとその様相を変えてしまう。
中澤が監督官に徹していたのに対して、
飯田はその任期満了の時までずっと「母」であり続けたのである。
まるでそれが規定路線であるかのように、メンバーの加入と卒業が激しく繰り返された飯田時代。
中澤や保田圭、そして安倍なつみといった。モーニング娘。の「生き証人」たちが
次々とグループを去り、また「モーニング魂」の継承が2世代目に突入して、
そのリアリティが大きく薄まったということもあってか、
メンバーたちに張り詰めていた緊張の糸はすっかりと消えてなくなり、
グループ内の関係は姉妹のようなアットホームさが色濃くなっていった。
確かに、切磋琢磨する心がなくなり、ある種の物足りなさを感じる向きというのもあるが、
メンバーの低年齢化が進み、タレントとしてよりもまず、人間的成長の方が先決だった時代に、
厳しくも優しい母なる存在はやはり必要であったと言わざるを得ず、
飯田圭織がリーダーとしてその役割を見事に全うした事は、
モーニング娘にとって、とても大きな事だったに違いないと思うのである。


そして現在。以前にも書いたように、吉澤ひとみが体育会系リーダーとして、
ミラクルエース久住小春の加入したモーニング娘。をまとめている。
家族的姉妹的だったモーニング娘。は今や、完全部活状態。
どちらかと言えばグループの雰囲気は中澤時代に戻りつつあるが、
あの頃のような悲愴感は全く感じられない。
それは、リーダーになった途端「管理職」然となってしまった前任の二人のリーダーと違い、
吉澤はリーダーでありながらも、自分もメンバーとして現役なのだという事を
強く意識しているのが大きいだろう。またその事が、メンバーたちを伸び伸びと活動させている。
それはある種奔放にも映るのだが、テレビでもオンエアされた、久住への愛の鞭を取り上げるまでもなく、
締めるところは締める姿勢も、体育会系らしく吉澤はしっかりと持ち合わせているので心配はあるまい。


たかが7年。されど7年。
その大河ドラマのダイジェスト版としては
この上ない仕上がりとなった『モーニング。チャンネル デジフォトヒストリー』。


モーニング娘。を愛する全ての人へ、猛烈にオススメしたい一冊である。