073「count down」



石川梨華wikipedia



2005年5月7日。東京地方は雨予報のようである。
あいにくの…という常套句を書こうとしてデリート。
思い出したのだ。5年前の「あの日」も、どんよりとした雨空だった事を。
お天気の神様、なかなか心憎い演出ではないか。


4期メンバーにとっての初舞台となった、
2000年5月、モーニング娘。初の日本武道館コンサート2Days。
1ヶ月前にメンバーとなったばかりの、
まだ垢抜けない原石のままの4人がステージに登場した瞬間に、
それぞれが現在のようなオンリーワンの存在になる事を、
どれほどの観客が予想できたことだろう。
歌もダンスもいっぱいいっぱい。MCも今から聞けば赤面モノの恥ずかしさ。
オリジナルメンバーから連綿と受け継がれてきた「モーニング娘。魂」は、
果たしてこの4人にも正しく伝わっていくのか。
きっと誰しも、不安の方が多かったはずなのだ。


しばらくして、4期メンの中でいち早く頭角を現したのは、
予想通り辻と加護だった。現在のダブルユーである。
テレビで平気で「ウンコ!」なんて叫んでみたり、
番組のトーク中に進行無視して好き勝手喋り始めたり。
見た目も言動も完全にお子ちゃまだった彼女たちのパワーは強烈を越え、
もはやちょっとした脅威ですらあった。
そして、プッチモニに入った吉澤ひとみが、実はそぅとぅ(このフレーズも懐かしい)
やんちゃな男キャラだった事が露呈。
あれだけカワイイ顔をしていながら、ドギつい変顔はするは、アホ丸出しの発言をするわ、
その意外性に「やられたっ」と思ったファンも多かったに違いない。


そんな中、石川梨華だけは一人もがいていた。
歌に難があるのはまあご愛嬌としても、
なかなか他の同期メンバーのように撥ねることが出来ない事は、
彼女にとってかなりの苦悩のタネになっていたのではないだろうか。
カワイイはカワイイが、同期の個性があまりに強力過ぎて、
なかなか自分の持ち味を見つけ活かす事ができずにいたデビュー当初。
そこに輪をかけて盗聴事件なんていう生臭い話もあったりして、
なんとなくではあるけど、デビューしたての石川梨華には
凡庸なイメージしか持てなかったものである。
しかし、チャーミーというキャラクターを与えられてから、
彼女の人生は一変し、さまざまな経験と成長の中で、
名実共にモーニング娘。の中核を担うまでになった。


「まだ遠慮っていうか…気にしちゃうとか、そういう感じで
 1回、2回って来たんで。3回目は、ちゃんと自分の力を出して、
 もう、ほんっとに満足いくようなステージにしたいです」


5年前の武道館開演前。
不安そうな表情で、自信なさげにそう呟いた石川梨華の姿をDVDで改めて見ながら、
ボキは、石川梨華の確実な成長と、凡庸なんて思ってしまった自らの見識のなさ。
そして、彼女が去り行く事の「重大さ」を再確認した。


卒業まであと4日。
今、僕たちに出来る事とは、一体なんなのだろう。