065「もう一度笑い声、聞かせて。」


『モーニング娘。』リーダー「矢口真里」についての重要なお知らせ(公式サイト)



突然の別れから丸一日。
真綿で首を絞められるように、じわりじわりと全身を包み込んでいく喪失感はついにピークに達し、
次見るモーニングに彼女がいないという事実を未だ信じられず、そして受け入れられずにいる。


以前、松浦亜弥のスキャンダルのときに書いたこの文章が、
ボキの「アイドルと恋愛」についての公式見解である。
当然の事ながら、今回もその見解にいささかの変わりはない。
ただ、前回の時ほどドライな感情でいられないのは、
やはりモーニング娘。矢口真里という、長年愛着ある存在が当事者だからであろう。


そして、あまりに突然の「脱退」。


普段なら「卒業」という言葉で飾られるべきはずの餞の日が、
余所余所しい言葉で、しかも事前になんの前触れもなく突然やってきたのは、
もちろんモーニング娘。史上において初めての悲しい出来事である。
でも、なにより悲しかった事は、彼女自身が「辞めたい」と口にしたことだった。


あの公式コメント通りの会話がなされていたのであれば、
彼女は自らモーニング娘。を、そして芸能界を辞したいと告げた事になる。
文面どおり、迷惑をかけたから責任を感じて「辞めたい」と言ったのか。
それとも、女としての幸せを選択する決心をし、納得づくで「辞めたい」と言ったのか。
その真意は僕たちには計れない。しかし、どちらの意味であったにせよ、
彼女がモーニングなり、芸能界なりを辞めてしまう事で、
どれだけの人間を「置いてきぼり」にしてしまう事になるのか。どれだけの人間が嘆き悲しむのか。
よもや賢明な彼女に、理解できないはずはないと思うのだ。
彼女の中に渦巻いていた葛藤と苦しみはいかばかりか、それを理解する事は到底できないが、


「『モーニング娘。』のメンバーであること。「アイドル」と呼ばれること。
 沢山のファンの皆さんの前に立てること…。全てが私の誇りであり、
 神様の贈り物だと思っていました」


とまで語るのなら、なぜ「辞めたい」という禁断の一言を口にしてしまったのか。
ただただ、それが残念でならない。


アイドルとしての自分。
そして、女としての自分。


本当の意味での幸せの形を模索し、
恋と仕事の間で揺れていた小さな体に不意に焚かれたフラッシュが、
アイドル矢口真里というアイデンティティを失わせてしまったのだろうか。
あるいは自らが身を引くことで、起こってしまった出来事や、
他人にかけた迷惑が全て許容されるように思えたのかも知れない。
そして、あれだけメンバーの中で強いイメージでグループを牽引してきた彼女が、
その実、誰よりも脆弱な存在であったのだという事実に、
ボキは筆舌には尽くしがたい切なさを抱いてしまうのだ。


たぶん、僕たちがショックなのは、彼女に男がいた事ではない。
理由はどうあれ、矢口真里モーニング娘。から、
サヨナラも言わずにいなくなってしまうという事なのだ。
多少逆風は吹くだろうが、いつもみたいに、みんなみたいに、
世間が忘れるまでだんまりを決め込んで、何食わぬ顔でアイドルしていて欲しかった。
それもアイドルのプロとしての立派な立ち居振る舞いだと思う。
というか、過去に彼女が体感してきた幾多のプレッシャーからすれば、
これしきの事で弱音を吐くなんて、本当に矢口らしくない。


やりきれない。ただそれだけである。




矢口へ。

いろいろあったけど、矢口がそう結論を出したのなら、もう何も言わない。
ただし、こんだけ多くの人間悲しませて、いっぱい迷惑かけるんだから、
もうこうなったらさ、矢口。
徹底的に矢口真里として、いろんな意味で幸せになってみろ。
そして、大事に思える人と、今のこの困難を乗り越えてみせてくれ。
もしも変な泣き言なんていいやがったら絶対許さないから。
覚悟して幸せになれよ。




でも、あんま無理すんなよ。
ただでさえ小っちゃい体、ますます小さくなっちゃうぞ。