064「「大阪 恋の歌」〜モーニング娘。26thシングル」


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同じこってり風味でも、前回取り上げた『スッペシャル ジェネレーション』が、
うまくラテン風味がまぶされて、割合胃袋にやさしかったのに対して、
大阪 恋の歌』は純度100%の正真正銘コテコテ浪花味。
「そのまんまやないかい!」
と、中田ボタン師匠ばりの甲高いツッコミを思わず叩きこんでしまいそうなほどの
剛速ド直球での勝負とあいなった。
タイアップの関係とは言うが、モーニングのなんでもあり精神に一目置く者であっても、
今回ばかりはさすがに賛否がはっきりと別れそうである。


個人的には全然嫌いではない。
関西に育った者として、メンバーが大阪弁を使っているのを聴いてゾクっとしたし、
近年のモーニング娘。にはなかったベタな曲調には、普通に新鮮さも覚えた。
ただ、強いてちょっとの物足りなさを挙げるとするならば、
関西ゆかりのメンバーが誰一人としていない事だろうか。


実は大阪を題材にした曲というのは、その表現方法がとても難しい。
その難解さは歌のテクニックというよりも、大阪弁の歌詞が持つニュアンスにあって、
標準語はもとより、他の地域のお国なまりには絶対にない
独特の感情を大阪弁は秘めているのだ。


例えば「アホ」という言葉がある。


もちろん人を罵倒する時にも使われるが、
例えば、なんか悪ふざけをしても憎めないようなキャラの人間に愛着を込めて、
「ほんまにアホなやっちゃなあ」と微笑みながら言ったりだとか、
恋人どうしが甘く囁き合う中で、男の言葉に思わずキュンとなった女がそっと耳元で
「もう…アホ…」と顔を赤らめながら言ったりだとか、
「バカ」という言葉よりももっと温かくて、もっと柔和なイメージで使われる場合も非常に多い。
そしてこの「アホ」に代表される大阪弁の微妙なニュアンスは、
残念ながら関西に育った者でないと正確に表現するのは難しいだろうと思うのだ。


そういう意味で、今回の曲で彼女たちが表現している大阪弁
惜しいところまでは達していても、「ほんまもん」にはあと少し足りない印象を持ったし、
そして、おそらく中澤裕子加護亜依ならば、大阪弁の微妙なニュアンスを
絶対的に正しく表現できたであろうという事を考えれば、
現有勢力に一人くらいは関西人のメンバーが欲しかったなあ…とどうしても考えてしまう。
ただ、これはあくまでも個人的な物足りなさの感覚であって、
決してそれらが曲のウイークポイントになる事はないだろうし、
むしろ、違和感のないレベルまで彼女たちが自然に大阪弁しているのはさすがだと思った次第である。
最近以前のようにレコーディングに付きっ切りではなくなったというつんく♂だが、
きっと今回ばかりは大阪弁指導も兼ねて、相当きっちりとやり込んだのだろう。


さあ残るはビジュアル。
すでにコンサートでは披露されているようだが、こちらはまだ未見。
歌と視覚が重なったときにどのような化学反応を起こすのか、
楽しみに映像解禁の日を待ちたいと思う。