029「「THE マンパワー!!!」/その2」
「THE マンパワー!!!」(初回生産限定盤)(amazon.com/注文もできます)
東北楽天ゴールデンイーグルス(オフィシャルサイト)
「"THE マンパワー!!!"で優勝も」? 楽天イーグルスの応援歌をモー娘。が(PC Web)
ラジオのオンエアで耳にして以来、
意識的に曲についての評価は保留してきた。
例えば「マンパワー」 という言葉のチョイスに対しての、
違和感というか、もう少しなんかあるだろ的な部分だったり、
楽曲面のなんとなくの物足りなさだったり。
究極のイエスマンでありながらも、
どこか素直に全てを飲み込む事のできない胸のつかえを苦々しく感じながら、
とりあえずはリリースの日を待っていた。
そして先日音源を手にし、何度も聴き返してみたが、
なんの事はない。あれだけ強固だった胸のつかえは嘘のように消えてなくなった。
そして感じたのである。
「ああこれは確かにマンパワーだわ」
と。
まずCDで聴いてみて気がついたのは、音色数の少なさだった。
ボキは耳コピのスキルをほとんど持ち合わせていないので、
もしかするとトンチンカンな分析なのかも知れないが、間違いを恐れずに表現するなら、
低音域に集められたメロディにボーカルとコーラスを乗せただけの、
極めてシンプルなアレンジという第一印象。
派手な音使いのc/wと比べてみるとよく解るが、
ギュンギュン系のギターの音や、シンセサイザーの高音はほとんど聞こえてこない。
有り体に言ってしまえば、淡泊で派手さのないアレンジであり、
当初ボキが抱いていた物足りなさは、
おそらくこの辺りから派生していたものではないかと思うのだが、
実はそれこそが、今回の楽曲の重要なテーマだったという事に、
曲を聴き返すうち、はたと気づかされるのである。
「マンパワー」すなわち「ヒトの力」。
では、音楽という括りにおけるマンパワーとは一体何だろうか。
さまざまな考え方はあろうが、
「声を出して唄う」という事の前には、たぶんどんな諸説も勝らないだろう。
楽器の力を借りることなく、自らの身体のみで音楽を表現する「唄う」という行為は、
ヒトという動物だけに与えられた、まさにマンパワーなのである。
バックトラックがシンプルであればあるほど、
ヴォーカルは押し出され、その存在感は際立ってくる。
モーニング娘。の持つ、パワフルでみずみずしい歌声を強調させる事で、
楽器の音色をも凌駕する、歌声というマンパワーの素晴らしさを表現する事こそが、
もしかすると、この楽曲が持つ最大のテーマなのではないだろうか。
華やかさ優先の派手な応援歌も悪くないが、
どんな波乱があろうとも、野球というスポーツを全うせんと、
ひたむきに日々努力し続ける楽天イーグルスの選手たちには、
歌というマンパワーを生業とし、そこに青春の全てを捧げ続ける
モーニング娘。のリアルな歌声がよく似合う。
「THE マンパワー!!!」
ヘンテコに思えた「名」は、楽曲の「体」を表す重要なファクターだったのだ。