024「こんこんの携帯が拾われた」
「あー、なんかもったいないなあ」
それが最初の感想だった。
自分の携帯が見当たらなくなった時に起こす行動。
携帯所持者ほぼ全員がまず思い浮かべるのは
「他人の携帯もしくは自宅電話から自分の携帯を鳴らしてみる」というものだろう。
当然、携帯を無くして途方にくれるこんこんもそうするに違いない。
という事は、状況によっては本物の紺野あさ美と遭遇するチャンスだってある訳だ。
まあそこまではないにしても、生こんこんと電話越しに会話するなんて事態などは、
もしかすると普通にあり得そうな感じがするではないか。
生こんこんと出会える万に一つの大チャンス。
例え本当に出会えなくとも、例えこんこんに疎ましがれても、
生身の紺野あさ美と接点を持てるという「ヲタ永遠の夢」が目前に迫る記念の瞬間。
２ちゃんに晒してプチ祭となり、ささやかな優越感に浸るのもいいが、
冷静になって、その千載一遇をモノにする為の「戦略」を、
じっくり時間をかけて練る方がはるかに有意義だと思うし、
賢明なモーヲタ諸氏ならばきっとそう考えるであろう。
結果、その価値があまり解っていないような非ヲタのところにチャンスが巡り、
それを活かす事ができなかったのは実にもったいない事だった。
（しかも、実際は本人と会話をしたような事を言っているあたりがとても憎たらしい）
とは言え、ボキは基本的に「アイドルの『裏の顔』には踏み込まない」という事を
ポリシーにアイドルヲタ（現在ならモーヲタ）をしている。
ただそれは「アイドルとてプライバシーを侵害するのはなんちゃらかんちゃら…」というような
安っぽい正義感の上に立っての一般論などではない。
つまりアイドルにも人間臭い部分はあるし、
それを暴いてしまう事も物理的には可能なのかも知れないが、
そんな全てをさらけ出してしまった存在にアイドルとしての魅力などは到底ない訳で、
やはりアイドルには、多少の神秘性なり未知の部分が存在した方が、魅力もあるし興味もそそられる。
アイドルを少しでも長く有意義に楽しむために、極力『裏の顔』は意識して見ないようにしようや…
という、言わばファンとして「アイドルの粋な楽しみ方」を実践するためのこだわりなのである。
好例が前にも書いた「大のオトナが」の一件だ。
全てはマイクワッチなどしなければ良かったまでの話で、
ファンが一線を越えてそういう余計な事をしてしまったばかりに
知らなくていい事まで知るはめになってしまった。
「いや、薄汚い裏の顔もひっくるめて全てを見たい。全て知ってこそファンだ」
なんていう自虐的意見がもしあるとするならば、それは単なる変態の戯言だとボキは思う。
例えばモーヲタが、偶然こんこんの携帯を手に入れてしまった時。
その中身を見たいという「あさましい興味本位」は人間誰しも持っているものだし、
一切携帯に触れずにいるという事は難しいかも知れない。
しかし、禁を破って紺野のプライベートに侵入し「紺野の見えざる本質」を図らずも垣間見てしまった時、
少なからず彼女を支持しているであろうモーヲタは何を思うのか。
たぶん「あー、見なきゃ良かった」という、その一点に尽きる事だろう。
裏の顔が覗けるという一時の昂揚と引き換えに、
モーヲタとして彼女を信じたい「純情」のようなものが汚されてしまう屈辱感。
それを思えば、
やはり「知らなくていい部分」は絶対にあって然るべきだとボキは強く思うのだ。
まあでも、それにしてももったいない…
