017「第55回NHK紅白歌合戦」


第55回NHK紅白歌合戦 曲目発表(NHKオフィシャル)

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その昔、紅白出場の報を聞いた当時の新メンバー・後藤真希が、
喜ぶ他のメンバーたちを尻目に「紅白ってなんですか?」とポツリのたまったという。


それは単純に彼女が紅白も知らないような無知だったと
言ってしまえばそれまでだろうし、
いかにもごっちんらしくて微笑ましいエピソードではある訳だが、
これこそが今の紅白歌合戦というものを如実に象徴していると言えなくはないだろうか。


今の若い世代に、紅白歌合戦が持つ威厳や風格などは通用しない。
所詮MステとかHEY!3なんかでよくやる長時間特番と同じような感覚でしかないのだ。
つまり、後藤の件の発言こそ、
今の若い世代が持つ紅白歌合戦のイメージそのものなのである。
しかも、ただでさえ冗長な長時間の番組なのに、さして興味もない演歌歌手の歌や、
意味の解らない応援合戦にまで付き合ってはいられないというのが本音だろう。
ヤケっぱちの編成と思われた格闘技番組が大健闘するのは、
ある意味自然の流れと言える。


年配の皆様にとっても同じ事だ。
大掃除もようやく終わり、年越蕎麦を待つしばしの間、居間の炬燵で見る紅白。
年末大晦日の風物詩は、同時に今や日本の文化でもある。
しかし、じっくり聴きたい演歌の合間にやたらうるさいだけのロック歌手やら、
歌のヘタクソなアイドル歌手が割り込み、せっかくのいい雰囲気も台無しで、
それならテレビ東京を回してゆっくりと…となるのもこれまた自然の流れ。


つまり、現在のような中途半端な紅白歌合戦は、
どの世代のどの性別のニーズにも全く合う事のない、
言ってみれば、NHK究極のマスターベーションなのである。



とは言え、業界内においては、紅白歌合戦の威光はまだまだ健在。
今年を彩った歌手のみなさんが一堂に会する
「歌番組界の有馬記念」としての体裁は何とか今も保ち続けている。
だから紅白出場歌手という肩書きは、芸能界の中ならどこに出しても恥ずかしくない、
かなり上級のステータスであると言えるし、
その紅白歌合戦にデビュー年から7年連続で出場しているモーニング娘。は、
これはもうスゴイという事なのである。


誰も見ていない今の紅白歌合戦は「出る事に意義がある」という存在でしかない。
ならば、どういう形であれ出場し続ける事が歌手として最も重要であるとボキは思う。
だから、例え唄う曲目がやっつけのメドレーだったとしても、
ステージ演出のセンスがあまりに古くて糞であっても、
いわゆる「人質状態」のまま何時間も待たされ続けたとしても、
モーニング娘。が出るというその一点だけを拠り所に、
ボキは今年も紅白を見ることになるだろう。


そして「今年が最後かもしれない」という危機感を
今年もしっかりと肝に銘じながら、
晦日の夜は静かに暮れていくのである。