013「松浦亜弥」


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松浦亜弥のパワーは落ちた。と言う人がいる。
確かに、2002年あたりまでの松浦はそれこそイケイケで、
そのすさまじい勢いにはある種の「怖さ」を感じたりもした。


生まれながらにアイドルになるための素質を
内に秘めていたとしか思えないような完全無欠のアイドルぶり。
一部有識者をして
「アイドル・サイボーク」とまで言わしめたその立ち振る舞いは、
角度を変えれば、1990年代に一般受けせんがため、
「らしさ」を捨ててしまった多くの
「アイドルと呼ばれたくないアイドル」たちへの強烈なるアンチテーゼであり、
彼女の放った理想のアイドル像は、
「アイドルと呼ばれたくないアイドル」しか知らなかった層までをも巻き込み、
巨大なムーヴメントを形成した。
そこには、本物の女性よりも女性らしい振る舞いを見せる
ニューハーフのごとき違和感も含んではいたが、
その違和感が逆に人々を惹きつける結果となるのだった。


しかし。


近年は一時の急激な勢いはすっかりと鳴りを潜めてしまい、
物足りなくなった者たちは「松浦はパワーダウンした」と辛辣に評する。
事実、ライブやテレビで彼女の唄う姿に「?」と思ってしまう事は多々あったし、
自身も「悩みがたくさんあった」と漏らすように、
彼女を取り巻く現状が確実に、しかも大きく変化してきている事は間違いない。
たぶん、アイドル・サイボーグとして君臨してきた
「初代・松浦亜弥」は事実上姿を消したのではないか。
その事をして、たぶん人たちはパワーが落ちたと話すのだろう。
なんとなく、そんな気がするのである。


ところで、彼女がハロプロ内でも数少ない
「歌える」メンバーである事に異論はないだろう。


ボキは松浦亜弥のその歌唱力こそが
全ての成功のバックボーンになっていると考えているし、
じっくり聴かせる曲を唄う事こそが、
今後の浮沈の大きな鍵を握っていると信じて疑わない。
そして極論を言えば、
これからの松浦亜弥にダンスチューンは一曲もいらないとさえ思う。


渡良瀬橋」の伸びやかな歌声を聴いていると、
少し前、露出の多い衣装でクネクネと体を動かして、
ライブの観客をこれでもかと煽っていたのがまるでウソのように思える。
そして、改めて気がつかされるのだ。
アイドル・サイボーグは彼女の持つ魅力の本質ではなかったという事に。


無理無理にやっていたのでは、あそこまでのパワーは発揮できないだろうし、
そういう役回りがもともと彼女の肌に合っていたのは間違いない。
しかし、そのサイボーグとしての役割を常に100%やり切る事で、
元来の持ち味だった「歌を唄って聴かせる」というベーシックな部分に
大きな影響を与えていたのもまた事実である。
そして、サイボーグとして存在する事に限界がやってきた時、
初代・松浦亜弥は消滅した。
しかしそれは決してネガティヴな事ではなく、
むしろ、彼女の真の魅力で勝負できる環境が整ったという、
言ってみれば「事態の好転」であると捉えるべきだろう。


アイドル・サイボーグ松浦亜弥は伝説として、我々の胸に深く刻み込まれ、
そして、来るべきニュー松浦亜弥が見せる魅力、歌声に期待は高まる。


松浦亜弥〜第二章〜
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