011「愛の第6感〜モーニング娘。6thアルバム」


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愛の第6感レビュー(OngakuDB.com)



アイドルのアルバムはおもちゃ箱でなくてはならない。
これがボキの長年の持論である。


明確なコンセプトとカラーを持ったアルバムは、
歌一本で勝負しようとするシンガーやアーティストに任せておけばいい。
アイドルは歌を唄う事だけが仕事なのではない。
アイドルという存在だから醸し出せる
かわいらしさ、色っぽさ、そして楽しげな雰囲気。
そういったものを歌というツールを使って表現し、
いかに支持してくれる人たちを楽しませるか。
それがアイドルのお仕事だとボキは思う。
そして、その表現の方法に筋の通ったコンセプトもカラーもほとんど必要はない。
コレはいいと思ったものを、ノンジャンルで取り上げる。
そのフレキシブルな姿勢こそがアイドルポップスの持つ大きなメリットであり、
だからこそ、アイドルのアルバムは、
何が飛び出すか解らないおもちゃ箱のような作品であるべきだとボキは考えている。


そういう意味で、今回の『愛の第6感』は
賞賛に値する作品に仕上がったのではないかと思うのだ。


沖縄風あり、コテコテの80年代アイドルポップスあり、
大御所をアレンジャーに迎えた意欲作あり、
そしてシングル曲の別バージョンあり…
と、まさになんでもアリのおもちゃ箱状態。
これぞアイドルアルバムの王道と言い切っちゃってしまっていいと思う。


そしてなんと言ってもその完成度の高さである。


モーニング娘。表現する楽曲たちは、言ってみれば
「グループアイドルの楽曲とはかくあるべきだ」
というお手本的な存在であるといえる。
意外性の部分も含めたパート割の妙。
各メンバーの特性をしっかりと把握した上での
ヴォーカルバランスや声の押し引きの采配。
そして、多人数グループである事のメリットを最大限に利用した
バッキングトラックの作り込みなど、
ちょっとそこいらの「普通のプロデューサー」には真似のできない芸当だ。


コンポーザーとして、多人数グループを御した経験など
ほとんどなかったはずのつんく♂が、
ここまで完全な形で楽曲をコントロールできるのは、
やはり自身がおニャン子クラブという多人数グループのファンとして、
その楽曲を浴びるほど聴き続けた事が大きく影響しているのだろう。
自らの現在の音楽嗜好を最優先に取り入れつつ、でもその根底にあるのは
「アイドルとはこういう歌を唄うべきだ」
「俺が聴きたかったのはこういう歌だ」
というつんく♂が持つアイドルポップスへの強いこだわり。
「好きこそ物の上手なれ」ではないが、そうしたアイドルへの強い思いが、
他の追随を許さない完成度の高さを生み、
つんく♂流とも言うべき
アイドルの一ジャンルを築き上げたと言っても過言ではないだろう。


ここしばらく、そのこだわりの部分が様々な外的要因によって
上手く発揮されていないような気がしていたのだけれど、
今回のアルバムでは完全にそれが解き放たれ、
久しぶりに「つんく♂流アイドルポップス」を
堪能できる仕上がりになったのはヲタにとって実に喜ばしい事だと思う。


なにはともあれ、年末年始にじっくり聴き込みたい1枚である。