296「劇団ゲキハロ考。」



スケジュール(舞台&ミュージカル)(オフィシャルサイト/中段にゲキハロのインフォメ)



ハロプロが少し前から継続的に続けてきた、小劇団とのコラボレーション・ワークス。
そして、つんくが仕掛ける演劇プロジェクト「つんく♂タウンTHEATER」の存在。
この2つの活動が少なからず意識下にあったので、今回の劇団ゲキハロというプロジェクトも、
そういった一連の動きの中の産物なのかな、とボクは思っていたし、
あるいは、ここまでハロプロが関わってきた、演劇にまつわる様々な活動の、
一応の集大成的な舞台になるのではないかと、当初、ボクは想像していたのである。


最初に「おや?」と思ったのは、今回の舞台のチケットが、
オークションで卒コン並の超高額で取引されている事、
そして、舞台の最後に、なぜかBerryz工房だけがミニライブをやるというのを聞いたときだった。
現在ハロプロで最も集客力を持っている、Berryzがメインの舞台という事で、
会場のキャパシティも考えれば、まあそういう傾向もやむなしなのかな、と思ったし、
ハロプロは歌を唄う集団だから、別に歌が演目に入っていても、その事自体に問題はないとも思う。
ただ、よくよく考えてみると、それって結局、会場にやってくるのは、
舞台を見るというよりも、Berryzを一目見たいBerryzのファンが大半で、
つまりそれは、演劇という名前を借りた「小さな箱でやるBerryzのイベント」に過ぎず、
それならば何も、無理くり小劇場でこんな回りくどい事をせずとも、
大きなホールを使って、全く同じ事をやったって構わない訳だし、
むしろそちらの方が、むやみに大金が乱れ飛んだりしない分、健全なのではなかろうかとボクは思ったのである。
想像通りというかなんと言うか、ブログや掲示板に寄せられる好意的な感想は、
いずれもBerryzのファンからもたらされたものであり、
否定的な感想、共演者であるメロンのファンの感想。そして、その他の観覧者の意見などは、
丸一日ネット上を動き回ったが、ほとんど目にする事はできなかった。
まあ誰も言わないのなら、ボクが言いましょうという感じで、
ファンの皆さんが感動の余韻に浸っているところに、冷水をぶっかけるようでいささか気は引けるが、
どうしても気になるので、はっきりと述べておきたい。


いま最もエネルギーにあふれたエンターティンメント、それが演劇だ!
現在関東近郊には2500〜3000ぐらいの小劇場をフィールドとする演劇団体が存在すると言われており、
毎日・毎晩さまざまな努力を重ねながら、自らの表現を演劇という形で世の中に訴えかけています。
そんな小演劇シーンの第一線で活躍するスタッフ達と、ハロー!プロジェクトのコラボレーション。
あふれ出すエネルギーとフレッシュな魅力の相乗効果で作り上げる旬なエンターティンメント、
それがゲキハロです。

                                          (オフィシャルサイトより)



という、ゲキハロの活動主旨を改めて確認した時、
今回の舞台が果たしてそれに即したものであったかと言えば、ボクは決してそうではなかったと感じるのだ。


ホールを使わず小劇場という会場に固執した結果、チケット入手が極めて困難となり、
結局、熱心かつ懐に余裕のあるBerryzのファンたちばかりが、それも大半において一人複数回参加するという、
従来のコンサートやイベントと大差のない状況設定となった事。
そして、その状況に輪をかけ、最後にミニライブをセットにしてしまった事で、
「ただのイベント」と「演劇鑑賞」のボーダーが極めて曖昧模糊なものとなり、
演劇を中心に見せたいという本来のゲキハロの主旨がすっかり霞んでしまった事。
何度も言うが、別に歌を唄うことは構わないのである。
だが、今回に関して言えば、演劇というものに特化したステージである訳だから、
その部分をブレさせない為にも、あえてライブは必要なかったような気がするのである。
そんなこんなでいろいろと考えてみた結果、内容的には絶賛されるべきものだったかも知れないが、
その在り方を冷静に見つめてみれば、本来、ゲキハロというイベントが作り上げたかった世界を、
十分には作り上げられていないという意味で、キツいようだが、
この舞台は「失敗」であったと言わざるを得ない。


なにもBerryz工房そのものや、作品を貶めるつもりはこれっぽっちもないのである。
学業と舞台を、しっかり両立しきった彼女たちは立派だと思うし、
どういう形であれ、彼女たちが芸能人としてスキルアップできたのは間違いないだろう。
まして作品に関してなど、ボクは見てもいないので、何を語ることもできない。
ただボクが言いたいのは、イビツな形のイベントに終始した今回の第1回公演を、
このまま「大成功」と位置づけてしまった時、
それが今後のゲキハロのスタンダードになってしまうのだという事である。
チケットがあんなに高いままで良い訳はないし、
リピーターのファンたちが客席を埋める状況がメリットになるはずもない。
普段は経験することのない舞台演劇を、彼女たちが精一杯稽古し、そして本番で精一杯演じる姿。
それをしっかりと味わいつつ、ファンの側もまた普段とは違った趣きをもって鑑賞する。
本来のゲキハロの醍醐味は、そういう部分にこそあるのだという事だけは、
関わるみんなが、ちゃんと解っておいた方がいいのではないだろうか。
だからこそ、今回の第1回公演を、意味なく手放しで絶賛する事なく、
今回のコラムのように、冷静に根底の部分から考え直す眼差しも必要だとボクは感じるのだ。

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